【概要】
著者(監督):賈英華 監訳:林芳
タイトル通り、最後期の宦官・孫耀庭の生涯をインタビューに基づき描き出す。人たらしで正直者、そして強運の持ち主だったためか、清朝滅亡、日中戦争、国共内戦、文化大革命などの転変を乗り越えて九十を超える長命を全うできた模様。帝都と故郷を行きつ戻りつする波瀾万丈の生涯は常に苦難の連続であったが、宮中での貴人や先輩宦官との交流や街見物の思い出など、嬉しいこと・楽しいことは少しはあったので、その追憶が彼を生かしたみたい。
皇族の性格や生活が活写される。個人的には京劇の役者も務めた載濤の多才ぶりが印象的であった。ふぎふぎの不安定さや婉容さんの満たされなさは見ててしんどいが。登場人物が多すぎて覚えられない。
孫耀庭はいやいよ世界でただ一人の最後の宦官となった。さまざまな経歴を経てきた耀庭の追憶は、高い歴史的価値を持っていた。宮廷を出た後、一時は北京を流浪し、世間の冷たさを思い知らされた。その代わり古い北京の風俗習慣にも詳しくなった。旧満州国の時代には、ラストエンペ ー溥儀の側近として、多くの秘密も知った。清末から民国[国民党]、旧満州国、新中国、さらには文化大革命を身をもって体験してきた彼は、一人の宦官としてこの歴史の変転を目撃した生き証人と言える。
☟のネタ本でもある。こっちの方が読みやすいぞい(; ・`д・´)
【詳細】
<目次>
- 第1章 幼き決断
- 第2章 清朝王府に仕える
- 第3章 皇太后と京劇団
- 第4章 紫禁城の日々
- 第5章 溥儀と皇后婉容
- 第6章 たそがれの宮廷
- 第7章 紫禁城を追われて
- 第8章 宦官たちの末路
- 第9章 満州国皇帝溥儀の下で
- 第10章 民国から新中国へ
- 終章 平穏なる晩年
<メモ>
「ああ、大清国もこれで終わりか!」
載灃は朝冠を築山に投げ捨てたが、誰も無言であった。一行が出ていった後、礼帽の羽根飾だけが徴かな風に揺れていた。投げ捨てられた朝冠は、清朝摂政王の地位の失墜を示したばかりか、溥儀の前途をも暗示していた。
入棺の際、最も重要なことは「宝」を探して元の位置に戻すことである。去勢した宦官は生殖器を誰にも知られない場所にしまっておき、死後、最も信頼する人に元の部位に戻してもらう。こうしてこそあの世で完全な人間とされる。体の一部分でも損失していれば、来世で苦しみを受け、猫か犬に生まれ変わるかもしれないという迷信があったのだ。
こうして、中国最後の宦官が半世紀余り保存してきた「宝」は、四旧破壊の時代の流れの中で、人里離れた原野に捨てられたのである。
彼はなつかしそうに順貞門の跡を撫でた。歴史の遺跡は彼の遠い記憶を引き寄せた。世の変転は歴史の傷痕をあとかたもなく消し去り、無情な歳月はこの歴史的な老人に深い皺を刻んだのだ。
「西の道を行って、西六宮で婉容皇后の旧居を見よう」
かつての紫禁城のしもべは、今日は主人公としてそこにいた。
〇他名言チックなもの
「人生とは一幕の芝居のようなもの」
「家に在れば千日も好し、家を出れば一日にして難し」