【概要】
著者(監督):森安 孝夫
一千年紀中国で最大の繁栄を謳歌した大唐帝国の国際性や統治形態に関して学術的に語る。ソグド人や北方遊牧民族の存在感は想像以上に大きかった模様。陸上交易路、いわゆるシルクロードの発展ぶりを紙面から妄想できる。
本書の大きなねらいは、これまで幾度となく語られてきたシルクロードと唐帝国に関わる歴史を、西欧中心史観とも中華主義思想とも異なる中央ユーラシアからの視点で、わかりやすく記述することにある。いいかえれば、遊牧騎馬民集団とシルクロードの両者を内包する中央ユーラシア史の側からユーラシア世界史を、すなわち前近代の世界史を見直すのである。
【詳細】
<目次>
- 序章 本当の「自虐史観」とは何か
- 第一章 シルクロードと世界史
- 第二章 ソグド人の登場
- 第三章 唐の建国と突厥の興亡
- 第四章 唐代文化の西域趣味
- 第五章 奴隷売買文書を読む
- 第六章 突厥の復興
- 第七章 ウイグルの登場と安史の乱
- 第八章 ソグド=ネットワークの変質
- 終章 唐帝国のたそがれ
- あとがき
<メモ>
七〜八世紀の唐は名実ともに世界一の帝国であり、その世界主義(コスモポリタニズム)は、国内諸都市における外国人居留地(コロニー)の存在、外国人使節・留学生・商人・芸人の遍在、外交・商業ルートによる外国文物の洪水のような流入、芸術・文化における西域趣味、道教・儒教に対抗した普遍宗教である仏教、さらに三夷教といわれた摩尼教・景教・祆教、等々によって特徴づけられる。これらはいずれおとらずシルクロードと密接に関わっている。
阿倍仲麻呂や空海の見た景色、君も見たくはないか(; ・`д・´)
中国史において、草原を本拠地とする遊牧民族は決して客人ではなく、農耕漢民族と並ぶもう一方の主人であったのである。まずそのことを読者にはしっかりと認識していただきたい。中国史を中華主義の呪縛から解き放つには、まずここが肝腎なのである。
隋・唐、元、清などの非漢民族王朝は決して例外ではない(; ・`д・´)
ソグディアナ(ほぼウズベキスタン)はたまたまユーラシアのど真ん中に位置し、東の中国、東南のインド、西南のペルシア〜地中海周辺東部地域、西北のロシア〜東ヨーロッパ、東北のセミレチエ〜ジュンガリア〜モンゴリアへと通じる天然の交通路たるシルクロード網の心臓部を占めていたから、ソグド商人が、国際的なシルクロード商人へと発展していくのは、いわば必然であった。
ウズベキ、行きてえなあ~(๑╹ω╹๑ )
※コロナは俺が滅ぼす(; ・`д・´)
歴史を学ぶ究極の意義は、人種にも民族にも言語にも思想にも何一つ純粋なものなどなく、すべては混じり合って形成されてきた歴史的産物であるから、そこにはいかなる優劣も差別もないということを、明確に認識することである。
四大文明圏から発展する農耕民と、中央ユーラシアから発展する騎馬遊牧民との対立・抗争・協調・共生・融合などの緊張関係こそが、アフロ=ユーラシアのダイナミックな歴史を生み出し、近代に直結する高度な文明を育んだのである。
何事も、異質なものとの衝突や融合が発展の鍵だ(; ・`д・´)
- さまざまな物品が運搬・取引されるユーラシアの広域ネットワーク、李白の「少年行」や胡旋舞などの詩歌・歌舞音曲、奴隷の購入に代表される高度な契約文書、安禄山の乱に象徴される北方遊牧民の強大な軍事力、ソグド人のコーカソイド感あふれる絵画や像…日本人を異国情緒で陶酔させてきたシルクロードの在りし日の光景が浮かんでくるようじゃないか(; ・`д・´)
- ソグド人を評して曰く、「利の在る所にて至ら不る所は無し」。
- 胡:華北以南の人々にとっての外国人・異国人
☟「麹氏高昌国時代ソグド文女奴隷売買文書」