【概要】
著者(監督):ロゲルギスト 松浦壮編
まず「ロゲルギスト」が謎の外国人かと思っていたよね。
7名の物理系教授(『理科系の作文技術』の彼も)が、わかっていそうで意外とわかっていない日常の科学の芽を拾い上げてエッセイ風にしたもの。ロゲルギスト(logos+ergon)精神とは、
- 日常のよくわかっていると思われる現象の裏に潜む真の原因を突き止める精神スピリット
- 詳細な観察で、より深い原因を説明する精神
- 知識の盲点を突く意外な発想をする精神
- 論理を貫く精神
- 注意深く観察する精神
のことらしい。基本的に対話篇の形をとって議論というか思索が進められ、いろんな話題に脱線していく。ダジャレやひっかけが多い。
寺田寅彦、中谷宇吉郎、湯川・朝永あたりの系譜っぽいオーラが出ていなくもないが、文章の味わいはそこまでない。が、日常に科学の種を見つけ出す精神、簡単な実験(思考実験含む)で意外と鋭いところまで迫ったりするところはさすがというべきか。電車内への人の詰め込みを模したやつとか、断続的に張力を与える装置とかね。古き良き素朴な科学精神の発露。学研感。
【詳細】
<目次>
- はじめに――ロゲルギスト精神(近角聡信)
- ロゲルギストのメンバー
- つめこむ
- 洋服は二着交替に着た方がいいか
- 「イトー」「ロジョーホコー」「ハーモニカ」
- パラドックスの効用
- 呼鈴はなぜ鳴るか
- シロウトの日本語文法
- 斜め向きに歩こう
- 数理倫理学序説
- 千鳥格子の謎解き
- 青空にあいている孔
- 水玉の物理
- 蛇行よろめき談義
- ぬれた砂はなぜ黒い
- フィゾー法の影武者
- 続 フィゾー法の影武者
- 要約のすすめ・反要約のすすめ
- 編者解説(松浦 壮
<メモ>
- アニーリング(焼きなまし):原子振動を盛んにして残留応力除去
- モールス信号の合調音語、霧吹きの原理、言語論チックな話、櫓とオールの違い、今もいまいち理解されていないリスクアセスメント・マネジメント(数理倫理学序説)、千鳥格子の謎解き、蛇の軌跡などなど。「呼び鈴はなぜ鳴るか」と「水玉の物理」は有名か。
- S/N比、揚力と推進力、屈折率の違いによる色の違いなども興味深い。
- 「許可なく 構内に 駐車を 禁ず」の違和感はよくぞ60年前に言ってくれた。
- 「は」は他と区別する助詞 ☜『日本語の作文技術』と同じ