【概要】
著者(監督):山本弘
『料理を作るように小説を書こう』で著者に興味を持ったのと、「アイの歌声を聞かせて」の元ネタ説が出ていたことから興味を持つ。
アンドロイドのアイビスが見込みのある少年に「たぶん君の知らない物語」を千夜一夜物語してくれる。人類の残したSF系小説を朗読した後は、インターミッションで感想タイム。だんだん害意がないことがわかって打ち解けてくる。
リレー小説、VR/ARで出会う男女、対話型AI、人間を見守るブラックホール監視ステーション、ループする夢と魔法の平行(仮想)世界、介護アンドロイド、バーチャルロボットバトルなど、短編それぞれ自体も面白いが、だんだん物語の分量は長く、歴史の真実が明らかになっていく。「ブラックホール・ダイバー」には「楽園追放」味を、「詩音が来た日」には「アイの歌声を聞かせて」味を感じた。
「退屈でしょうから、また話をしてあげるわ」
「ブックはどうした?」
「要らない」 アイビスはかぶりを振った。これは私の物語だから」
「お前の?」
「ええ。私が創造者に反逆したのかという話──今度こそ真実の物語よ」
思念波、ワープ、世界や感覚の解像度、レイヤー間の階層構造、空想と日常、自我の創発、意味不明な新語を生み出すマシンAIなどなど、SF的な要素は多々あれど、やはり本作を通じて貫かれているのは、キカイやAIへのポジティブな視線。AIを過度に恐れる人類と、そんなつもりはないAI。だが、本作でのAIはむしろ、
ヒトという要介護者すべてを慈しみ、優しさで包みこみ、奉仕を続ける。いつか、すべてのヒトが滅びる日まで、できるかぎりたくさんの良い記憶をヒトに与えるために。
というように人を手助けする、人の夢を継承するパートナーとして描かれている。
私たちはヒトを真に理解できない。ヒトも私たちを理解できない。それがそんなに大きな問題だろうか? 理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。 それだけで世界から争いは消える。
それがiだ。
夢をかなえてドラえもんといった感じだ。地味に巻頭の娘への献辞もジーンときたりする。
【詳細】
<目次>
- プロローグ
インターミッション1 - 第1部 宇宙をぼくの手の上に
インターミッション2 - 第2部 ときめきの仮想空間
インターミッション3 - 第3部 ミラーガール
インターミッション4 - 第4部 ブラックホール・ダイバー
インターミッション5 - 第5部 正義が正義である世界
インターミッション6 - 第6部 詩音が来た日
インターミッション7 - 第7部 アイの物語
インターミッション8
エピローグ
<メモ>