【概要】
著者(監督):本郷貴裕
プラントエンジニアリングでおなじみEPC契約(Engineering, Procurement, Construction)の実務がわかる。「まっとうに仕事を遂行したコントラクターが得るべきものを正当に得られる契約書」にすることを目指しているとのこと。契約書は本来どうなっているのが普通で、自社(本書ではコントラクター)にとってどのように記載すれば有利になるのかを英文を分析しながらポイントごとに見ていく。
一応コントラクター向けだが、裏返せばオーナー側にも応用可能。EPC業務(設計、調達、建設、試験・試運転、パンチ、検収など)の大まかな流れ、shall満載のお堅い文例、巨額損失を出したEPC契約の失敗例いろいろ、さまざまな保証ボンドが常にあり各ステークホルダがリスク回避の知恵を絞っているなど、英文がなくても結構役立つ内容。何にせよ受注する側はプロジェクトの「初めて」要素に注意。
著者より、工学部出身で慣れない法務チックなことに悪戦苦闘した経験から、根性あるお言葉も頂戴できる。いまは英文契約の伝道師として名を馳せている模様。
- 「今日の本番は、明日の本番に向けた練習である」
- 「たとえ今日は役立たずだと周りから思われようが、明日に向けて何かしら得ようともがく」
【詳細】
<目次>
- 第0章 なぜ、EPC契約は難しいのか?その難しさを本書はどう解決するのか?
- 第1章 EPC契約の基礎
- 第2章 英文契約の頻出表現と条文の「型」
- 第3章 EPC案件における巨額損失事例(コストオーバーラン)の原因と対策
- 第4章 契約上の手当およびその運用上の注意点
- 第5章 下請(サブコン・サプライヤー)との契約上の注意点
- 第6章 プラント用機器供給契約における注意点
<メモ>
●「まっとうに仕事を遂行したコントラクターが得るべきものを正当に得られる契約書」に盛り込むべき内容:
①コントラクターが実際に行った仕事に対して正当な対価を得られること。
②コントラクターが不当な損害賠償責任を負わされないこと
③コントラクターの原因ではない事象で工程が遅れ、または追加費用が発生した場合に、コントラクターが納期に遅れたことの責任を問われず、生じた追加費用をオーナーが負担すること。
●契約書に書かれていること
A.当事者が「しなければならないこと」と「できること」(義務と権利)
B.契約違反とは何か
C.契約違反の効果
●綱引き(コントラクター/オーナー)
- スコープを(Scope of Work)をなるべく具体的に/曖昧に
- コスト+フィー方式/ランプサム(Fix価格)契約 ※ただし高め
- キャッシュ回収をなるべく早く/遅く
- 納期遅延・性能LD(Delay/Prformance Liquidated Damage)は少なく/多く
- 契約不適合期間(Warranty Period)は短く/長く
- 逸失利益(loss of profit)は免責する/しない