【概要】
著者(監督):浅尾幸次郎
目次にあるように、現在完了や冠詞など、英語のさまざまな「なぜ」を手掛かりに英語の歴史や英文法のフシギを辿る。英語のゴチャゴチャさと豊饒さは表裏。読み物感と学術感とのバランスがなかなかいい感じ。
be動詞系の語が時代とともにだんだん単純化されていくあたりを見ていると、「英語の歴史は複雑な屈折を落としていく歴史」であることを感じる。民族や文化・言語の混淆が単純化を加速させた模様。
【詳細】
<目次>
- まえがき
- 1 英語の始まり
- 2 「てにをは」はどこにある
- 3 代名詞にだけ主格・目的格があるのはなぜ
- 4 屈折はなぜ消えた
- 5 格はどこへ行った
- 6 <3単現>だけでない動詞の謎
- 7 未来形はどこにある
- 8 仮定法は仮定を表すのか
- 9 can, may, mustに-sをつけないのはなぜ
- 10 覚えきれない単語の謎
- 11 前置詞of の意味はなぜ混乱している
- 12 英語は歴史的かなづかい
- 13 A の謎:可算・不可算はどうして決まる
- 14 定冠詞の謎:the はつけるの、つけないの
- 15 関係代名詞にthat とwh- があるのはなぜ
- 16 that で程度・結果を表すのはなぜ
- 17 不定詞にto がつくのはなぜ
- 18 不定詞は何を表す:to 不定詞と原形不定詞
- 19 現在完了形にhave を使うのはなぜ
- 20 進行形は進行を表すのか
- あとがきに代えて――『オックスフォード英語辞典』を使う
<メモ>
- "be"に相当する古英語、屈折(活用)しすぎ。屈折の消失や文法の単純化は歓迎したい。
- 流入民族の変遷:ケルト系ブリトン⇒ローマ⇒ゲルマン(アングロサクソン)⇒ノルマン(フランス)
- 引用元は聖書とシェイクスピア率が高い。映画や小説のセリフから好例を拾ってくるあたりはさすが。ヘミングウェイとかジョブズとか。
- 時代が下るごとに簡略化されていく仮定法、格の消滅と語順の厳格化、形式主語it/thereの出現、疑問文否定文のdo等の出現、単音節語の増加、対格・与格の融合(目的格)、目的格whomなどの主格whoへの吸収that,of,toなどのイメージ、現在完了形や現在進行形の誕生、大母音推移など。
- 「英語の歴史は複雑な屈折を落としていく歴史」。そして日常語であるがゆえにそれに抗ってきた不規則動詞。また品詞区別のため誕生した動名詞。
- 「英語はゲルマン系の言語でありながら、語彙の面ではロマンス系の性質を強く持つことばになったのです」
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