【概要】
著者(監督):相川司
評伝というよりは、新選組の組織図や土方さんの成り上がりの研究。幕末の動乱の中、土方さんの序列がだんだん上がるのが面白い。
…ほぼNEET⇒近藤勇門人⇒新選組平士⇒新選組副長No.3⇒副長No.2⇒副長No.1⇒新選組隊長代行⇒伝習第一大隊隊長(連隊長=大佐相当)⇒陸軍奉行並(少将相当)
戦術的・局地的勝利をひとり重ねるも、時代の流れには抗えず…。俸禄システム、幕末の勢力図概観、派閥のバランスを考慮した組織図、意外と対人調整力高い近藤(増長・慢心も)、奥羽諸藩のgdgdさなども面白い。
土方さんめっちゃ出世したな(*'ω'*)
— Javaさん(サム・ジーヴァ帝) (@Javalousty) 2020年12月21日
ほぼNEET⇒近藤勇門人⇒新選組平士⇒新選組副長No.3⇒副長No.2⇒副長No.1⇒新選組隊長代行⇒伝習第一大隊隊長(連隊長=大佐相当)⇒陸軍奉行並(少将相当)
【詳細】
<目次>
- 第1章 武州胎動編―石田の歳蔵から浪士組・土方歳三へ
- 第2章 京都雄飛編―壬生浪士組・土方歳三
- 第3章 京都激動編―新選組副長次席・土方歳三
- 第4章 京都死闘編―新選組副長・土方歳三
- 第5章 関東転戦編―鎮撫隊副長・内藤隼人
- 第6章 奥州流離編―伝習第一大隊隊長・土方歳三
- 第7章 箱館散華編―陸軍奉行並・土方歳三
<メモ>
▶同時代人による土方さん描写
- 「身長五尺五寸眉目清秀にして頗る美男子たり」
- 「土方は役者のような男だとよく父が云いました。真っ黒い髪で、これが房々としていて、眼がぱっちりして引き締まった顔でした。むっつりしていて余り物を云いません」
- 「いい男ですから、一万石や二万石の小大名とよりは見えませんでした」
- 「色は青い方で、大きな軀体ではない。漆のような髪を長く振り乱している。ざっと、一個の美男子というべき風貌」
- 松本良順「歳三は鋭敏沈勇、百時を為す電の如し」
現在の警察は、①交通・生活安全警察、②刑事警察(司法警察)、③公安警察に大別されるが、新選組はその全機能を兼ね備えた。①については、島原遊郭で火事騒ぎがあったときに、現場整理を行った記録が残っている。②は犯罪捜査と逮捕であり、不逞浪士召し捕りに集約される。現在の③公安警察の職務は、反政府活動への警戒(情報収集、捜査)であり、機動隊の運営や皇族などの警衛も担当するから、これ以上述べる必要もないだろう。
つまり組織の拡大によって〈勇=政治活動・外交折衝、歳三=内部管理全般〉と機能の分離が図られ、歳三のステータスは一段と向上した。その象徴的な表現が「両長」、すなわち局長&副長の併称である。
新選組は京都守護職の「局」を外れ、明確に徳川陸軍の一部隊となった。それに伴い、勇の職制も従来の局長に加えて、隊長が用いられるケースが増え始める。新選組は会津藩に恩義はあるものの、幕臣である以上、その忠義は徳川家に向けらている。
ちなみに、歳三の佩刀では「和泉守兼定」が有名だが、秋月が歳三から譲られた刀「大和守源秀国」も現存する。表に「秋月種明(登之助)が懇望して帯びた刀」、そして裏面には「幕府侍土方義豊戦刀」と銘が刻まれている。
幕府侍──。私は、それこそが歳三の誇りであり、生き甲斐だったと思う。
戻ってきた両名に、遠藤(文七郎、仙台藩執政)は「諸君の行動は任俠の類いであって、事は成就しませんぞ」と伝えた。男気を意味する義、任俠といった比喩は、実に的確であり、歳三の行動を言い得て妙である。負け戦とわかっていても、信じる正義のために戦う。それが義侠である。
武士道を追い求めた歳三にとって、法度や軍律の持つ意味合いは、現在から想像する以上に重いものがあったのであろう。農民として生まれた歳三は、動乱の中を武士以上に武士らしく生き、その能力がゆえに頭角を現し、最後は箱館政府の陸軍奉行並にまで出世した。まさに「不屈のヒーロー」である。そのとき、兼務した海陸裁判役頭取は、「軍律の鬼」歳三にとって、最も相応しいポストだったと思う。
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