評価:B+
【評】
「今この国の三権分立は、かつてないほどの危機に瀕しています。あらゆる分野で大企業の力が強くなりすぎ、ついに議会の権限まで超越してしまった」
巨大グローバル企業に牛耳られたアメリカ社会のリアルを取材する。
蚕食された農業・畜産、公共サービス。アカデミズムも例外ではない。
「アメリカ中の農家が、巨大な企業の下請けになってきている。養鶏業界はその代表的な縮図なのです」
寡占化によって規模が大きくなるほどに、企業の政治への影響力も拡大してゆく。公共政策が、部外者によるイメージダウンから企業を守り、利益拡大を後押ししてくれるようになる。
「綺麗にパックされた鶏肉を見たときに、それがどこから来たのか、どうやって育てられたのかを考えることは、地産地消という本来のやり方を続ける小規模有機農家を守るだけでなく、私たち自身が他のいのちとのつながりを見失わないためにも、とても大事なことなのです」
GM種子による収奪サイクルはもはや鬼畜の所業。
食料供給の企業所有を国内で完成させた後は、諸外国に「民主主義」「強い農業」「財政再建」「人道支援」 などを理由に介入、集約させた広い農地で輸出用GM作物の大規模単一栽培を導入させ、現地の小規模農民を追い出した後は、株式会社アメリカが動かしていく。インドやイラク、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアなど、その勢いはとどまるところを知らなかった。モンサント始め一握りのアメリカ系多国籍バイオ企業が、世界の種子の大半を手中に収めると、次は今までよりもさらに強力に、世界市場拡大の障害を取り除く必要がでてきた。
地に堕ちた民主主義。
「信じられません。州民の代弁者であるはずの州議会議員が、閉じられたドアの向こうで企業の望む法案を作成していたなんて。何よりもショックだったのは、こうした民主主義を根底から揺るがすようなことが、国民の知らないところで秘密裏い、30年以上も続けられていたことです」
80 年代から加速した規制緩和と民営化、垂直統合、政府・企業間の回転ドア、ALEC(米国立法交流評議会)、そして市民連合判決といった一連の動きが、アメリカを統治政治から金権政治へと変えていった。寡占化によって巨大化した多国籍企業は、立法府を買い、選挙を買い、マスメディアを買うことでさらに効率よくその規模を広げてゆく。
最後に残った、わずかな希望。
それは、SNSと、99%の人々の行動。
決してあきらめず、無力感に負けず、しあわせな未来をイメージし続けることの力。どんなささやかな行動も、そこに向かう一歩だと信じて進むことの価値を教えてくれた、世界中の「99%」たちへ、愛をこめて。