評価:B
【評】
走り出した愛に理性のバリアは効かない。
それは、山籠もりをしてもなお、消えることのない愛。
あの人は、道の端で夕顔の花を見つけると、それを摘みとるのでした。手に白い花がにじんで、それが夕暮れの色を余計に濃くするように思われました。
わたくしはこうして凛然とした寒さと寂寥に対立しながら、あの人をどんなに純粋に、そしてしまいには完全な神として、思い憧れたことでしょう。
だが、たった一つ、心をこめて、本当にあの人を愛しつづけたということだけは、少しの不安もなしに言いきれます。全てを捧げて、心の限りで、思いの悉くをつくして、あらゆるものを顧みないで・・・・・・本当にあの人だけは愛しつづけました。
好きだったのか、嫌いだったのか、今は聞くすべもないけれど、若々しい手に、あの人がかつて摘んだ夕顔の花を、青く暗い夜空に向って華やかな花火として打ちあげたいのです。