あらゆる事物のデータ化が進む21世紀に対し問題を提起する。
20世紀に長足の進歩を遂げた核兵器や医療などのテクノロジーは、それまでの人類が数千年も課題としてきた飢饉・疫病・戦争を、技術的に解決可能な問題に変えた。21世紀の人類は「今度は人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウスに変えることを目指すだろう」。昨今のテクノロジーが加速させるデータ至上主義は、人間の心や生の有意味性を根底から解体する危険がある。空虚なサイバーパンク世界を招かないためにがんばろう!
現代の深層、常識の陥穽に気づかせてくれる。ただ、例示や比喩が多いのはよいが、やや内容が冗長な気も。
【詳細】
<目次>
第1章 人類が新たに取り組むべきこと
第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2章 人新世
第3章 人間の輝き
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手
第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
第6章 現代の契約
第7章 人間至上主義
第8章 研究室の時限爆弾
第9章 知能と意識の大いなる分離
第10章 意識の大海
第11章 データ教
<メモ>
- 20世紀のTo Doリスト:飢饉、疫病、戦争
- 21世紀のTo Doリスト:不死、幸福、神性
人類は(中略)人類を残忍な生存競争の次元より上まで引き上げることができたので、今度は人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウスに変えることを目指すだろう。
第一部は前著『サピエンス全史』のおさらい 。
「確率を正しく計算する動物だけが、子孫を残す」ということでホモサピ繁栄。「新しい種類の経済的関係が、動物の残酷な利用を正当化する新しい宗教的信念とともに登場した」ということで、農耕文明が一神教の世界観を生んだと指摘。
そして20世紀までの間に、人間は飢饉、疫病、戦争を技術的に解決可能な問題に変えた。核兵器や医療などのテクノロジーが平和を可能にした。人間至上主義の誕生は、外面の権威より内面の感情を重んじた。
21世紀ではデータ至上主義。意識や感情はなにか、それらはデータに還元できるのか、といったことが焦点に。生命科学が自己や意志を解体する。虚構で繁栄した人類は、皮肉にも虚構の空虚さにこれから悩むみたいよ。
<今起こりつつあること>
- 科学は一つの包括的な教義に収斂しつつある。それは、生き物はアルゴリズムであり、生命はデータ処理であるという教義だ。
- 知能は意識から分離しつつある。
- 意識を持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが間もなく、私たちが自分を知るよりもよく私たちのことを知るようになるかもしれない。
<問題提起>
- 生き物は本当にアルゴリズムにすぎないのか?
- 知能と意識のどちらのほうが価値があるのか?
- 意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分を知るよりもよく私たちのことを知るようになったとき、社会や政治や日常生活はどうなるのか?
<前著>
※ 誤植p.176 l.15 捧→抱