Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

谷川俊太郎詩集

谷川俊太郎詩集 (ハルキ文庫)

【概要】
著者(監督):谷川俊太郎 編:ねじめ正一

谷川俊太郎、こども向けなイメージがあったが幅広く手掛けている模様。融通無碍な空想と宇宙とさみしさがリンクする。「かっぱ」「いるか」「いちねんせい」なんかは〇渕教室の国語発声で読んだ記憶が。「水遊びの観察」は詩人の内面にちょびっと迫れる感じがする。天衣無縫でメランコリックで、なんだか惹かれる。

 

【詳細】
<メモ>
●かなしみ

あの青い空の波の音が聞えるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい

透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった

 


●二十億年の孤独

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

 
●62

世界が私を愛してくれるので
(むごい仕方でまた時に
やさしい仕方で)
私はいつまでも孤りでいられる

 

●男の子のマーチ

おちんちんはとがつてて
月へゆくロケットそっくりだ
とべとべおちんちん
おにがめかくししてるまに

とべとべおねえさん。

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●五月の人ごみ

どんぐりまなこ
かなつぼまなこ
ししっぱな
だんごっぱな
にきびづら
らんぐいば
にじゅうあご
ぶしょうひげ
でっちり
はとむね、
だいこんあし
しゃーべっととーん
ケロイド

 

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●ごあいさつ

どうもどうも
やあどうも
いつぞや
いろいろ
このたびはまた
まあまあひとつ
まあひとつ
そんなわけで
なにぶんよろしく
なにのほうは
いずれなにして
そのせつゆっくり
いやどうも

 

 ●うそとほんと

うそとほんとはよく似てる
ほんとはうそにによく似てる
うそとほんとは

双生児

 

●川

 かあちゃん
 かわはどうしてわらっているの
たいようがかわを すぐるからよ

 かあちゃん
 かわはどうしてうたっているの
ひばりがかわのこえをほめたから

 かあちゃん
 かわはどうしてつめたいの
いつかゆきにあいされたおもいでに

 かあちゃん
 かわはいくつになったの
いつまでもわかいはるとおないどし

 かあちゃん
 かわはどうしてやすまないの
 それはね うみのかあさんが
かわのかえりをまっているのよ

 

 

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●朝のリレー

カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
はえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

 

●公園又は宿命の幻

あり得たものとあり得ぬものが
重なりあっている    その    豊饒への 怖しい期待こそが
世界の構造ではなかったか

 

●生きる

生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

 

●うんこ

どんなうつくしいひとの
うんこも くさい

どんなえらいひとも
うんこを する

うんこよ きょうも
げんきに でてこい

 

●手紙

そして口をつぐむしかない問いかけも
もし生きつづけようと思ったら
星々と靴擦れのまじりあうこの世で

 
●二月二十九日
 うるう年のために

知性は結局死亡するだろう
と生まれたばかりの赤ん坊が言って
二時間後に死亡したので
報道管制がしかれた


●さようなら

ぼくもういかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
どこへいくのかわからないけど
さくらなみきのしたをとおって
おおどおりをしんごうでわたって
いつもながめてるやまをめじるしに
ひとりでいかなきゃなんない
どうしてなのかしらないけど
おかあさんごめんなさい
おとうさんにやさしくしてあげて
ぼくすききらいいわずになんでもたべる
ほんもいまよりたくさんよむとおもう
よるになったらほしをみる
ひるはいろんなひととはなしをする
そしてきっといちばんすきなものをみつける
みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる
だからとおくにいてもさびしくないよ
ぼくもういかなきゃなんない


●少年Aの散歩

12
人間の感性と知性の全くとどかない
宇宙生物に出会ってみたい
校門の前で
そして一瞬ののちに殺されたい
そいつの残像を網膜に焼きつけて
そのとき僕は宇宙を理解するだろう

 

16
このノートの罫の中で
いま書いている文字の中で
僕は父の切腹介錯してあげよう
父の首は銀座和光のショーウィンドウに
曝す

父にどんな恨みがあるんだ(*'ω'*)

 

26
風呂場のタイルの隅で
小さな蜘蛛が丸くなっていた
あの蜘蛛の頭の中に壮大な宇宙の幻が
宿っているとしたら──

 

●ふくらはぎ
俺はおとつい死んだから
もう今日に何の意味もない
おかげで意味じゃないものがよく分かる
もっとしつこく触っておけばよかったなあ
あのひとのふくらはぎに

 

●誕生

頭が出かかったところで赤ん坊がきく
「お父さん生命保険いくら掛けてる?」
あわてておれは答える「死亡三千万だけど」
すると赤ん坊が言う
「やっぱり生まれるのやめとこう」

 

●ごちそうさま

おとうさんおいしかった
おとうさんあした
わたしのうんちになるの
うれしい?

サイコかよ。


●倉渕への道

倉渕への道は曲がりくねっている
北側には低い山が連なり
南側には川が流れているらしく水音がする

なだらかに山へと向かう野に時折小道が通じていて
灌木のあいだに点々と花が咲いている
遠くから見ると目立たぬ花々だが
近く寄って摘もうとすればみなこまやかに美しい

倉渕への道の途中で女と花を摘んで束ねた
知っている花の名は僅かだった
もろもろの観念の名は数多く知っているのに

六十年前に父が建てた小さな家に花をもち帰り
針金で縛ってある白磁の壺にいけた
死後にこの日のことを思い出せるといい
言葉をすべて忘れ果てたのちに


●あかんぼがいる

そのちっちゃなおっぱいがふくらんで
まあるくなってぴちぴちになって
やがてゆっくりしぼむまで

 

●黄金の魚

いのちはいのちをいけにえにして
ひかりかがやく
しあわせはふしあわせをやしないとして
はなひらく
どんあよろこびのふかいうみにも
ひとつぶのなみだが
とけていないということはない

 

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