【概要】
著者(監督):宮本輝
いまどき(といっても古いが)書簡体の物語。いわくありげな男女の愛憎劇、もといじゃれ合い。後悔や罪悪感に塗れた過去の話が、いつしかいま・あしたの話に変化していくのが興味深い。メールやSNSには出せない深みがあるね。
【詳細】
偶然再会した元夫婦が、来し方9割行く末1割を手紙で語り合う。
これまでに出逢った人々、自分の知らない相手の経験と感情、いま共に暮らしている人々。愛おしく苦しく、苛立たしく気恥ずかしい思いがあった。これらを、ありのままにわがままにさらけ出せるか?
物語が進むにつれ、灰色の映像が徐々に彩色されていくかのよう。
ああ、あんなにしあわせだったのにと私は思いました。
私、好きなことを好きなように書き続けてまいるつもりでございますことよ。
この人生には、死ななければ理解できない事柄がたくさん隠されているに違いありません。
私は最近、私の<いま>は、私の過去によってもたらされていると確かに思えるようになりました。
私は勘違いをしていたのです。かつては、憎しみにまかせて、それをあなたのせいだと思い込んでいた時代がありました。本当に何という八つ当たりだったことでしょう。
あの、宇宙の不思議なからくり、生命の不思議なからくり、生命の不思議なからくりという言葉が、いま私に深いおののきに似た感情をもたらします。