【概要】
著者(監督):宮下奈都
「僕は調律という森に出会ってしまった。山には帰れない」
「板鳥さんから、柳さんから、羊から、ピアノから、たくさんの砂が押し寄せてきて、僕は溺れそうになりながら、それを一粒でもつかもうと必死だった」
天然物の主人公のひたむきでまっすぐな成長を見ていると、自分を見ているようで、励まされるような、気恥ずかしいような。すっきりした読後感が得られる。そして、また闘う勇気も。
何者にもなれていない、なれるのかもわからない、そんな若人は読んでみては。
【詳細】
「きっとここから始まるんですよ」
「どこへ行ったって感じのよくない人はいて、人をじりじり踏みにじるようなことをいう」
「あきらめないことです」
「何を言っても何かを言われるなら、最後に残った思いだけを言おう」
「板鳥さんから、柳さんから、羊から、ピアノから、たくさんの砂が押し寄せてきて、僕は溺れそうになりながら、それを一粒でもつかもうと必死だった」
「ここでやっていく。その誇りを持たなくちゃいけない」
「僕などまだまだ、まだまだだと思う。だけど、そこを目指していかなければ、永遠にたどり着けないだろう」
「具体的に何ができていないのか、何が足りないのか、わからないことが怖い」
「やっと、わがままになれた」
「見てる人は見てるってこと」
「今は思うよ、外村くんみたいな人が、根気よく、一歩一歩、羊と鋼の森を歩き続けられる人なのかもしれない」
「もしかしたら、この道で間違っていないのかもしれない。時間がかかっても、まわり道になっても、この道を行けばいい。何もないと思っていた森で、なんでもないと思っていた風景の中に、すべてがあったのだと思う。隠されていたのでさえなく、ただ見つけられなかっただけだ」
<その他>
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
- 章や節の切れ目が不鮮明なのが、想念の適度な連続性を感じさせる。
- 『君嘘』もよろしくね!