著者(監督):鴻上尚史
【概要】
「不死身の特攻兵」佐々木伍長の戦歴と存命時のインタビュー、そして特攻作戦の総括と日本人の精神構造。現代に依然残る命令者の欺瞞には暗澹とした思いになるが、日本的組織が陥りがちな精神構造をあらかじめ知っておくことに歴史を学ぶ意義がある。
とにかく、
「もはや、人間を追いつめるような、特に若い人々を追いつめるようなことは一切、人間社会から除き去らねばならぬことを沁々と感ずる」。(『わだつみ』)
【詳細】
佐々木伍長のドキュメンタリー、インタビューを通じ、忠誠と反抗(冷静な思考)は共存できることを説く。
おそらく著者の意図は、彼の人生・生き方を通じ、第四章の内容を読者に印象付けることにある。
ありがちな戦争悔悟として、「「命令した側」と「命令された側」をごちゃ混ぜにしてしまうのは、思考の放棄でしかない」と指弾。戦争にも指導者と被指導者が存在する。
どんな集団にも、リーダーと部下がいて、責任を取るのは、「その指示を出したリーダー」です。その指示に従った部下まで責任を取るのなら、「責任」というものは実質的には無意味になります。
さらに日本人の「集団我」「所与性」などの国民性に触れ、
みんななんとなく問題だと思っているのに、誰も言い出さないから「ただ続けることが目的」となっていることが、この国ではとても多いのじゃないかと僕は思っているのです。
と静かな怒りをインクに託す。
若干総括部分の掘り下げが浅い気もするが、問題に気づいて/が発生しているのに一向に変化しない日本の組織・慣習に警鐘を鳴らしている点は評価できる。