Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

連合赤軍「あさま山荘」事件

著者:佐々淳行
評価:B+

【概要】
経済的繁栄を謳歌する昭和日本の暗黒面。日本人の9割をテレビに釘付けにした連合赤軍あさま山荘」事件を、現場指揮官が描く。実例と寸言に満ちたリーダーシップ論でもある。

【詳細】
「ちょっと軽井沢行って、指揮してこいや」
と突然、混成部隊(静香ちゃん含む)の現場指揮官を命じられた著者。
大学紛争、ミシマ事件(朱染めの絨毯)、赤軍派の台頭と連合赤軍の結成、爆発物処理(リクイッド・ナイトロージェン)など「長い長い回想に耽っ」たあとは、あさま山荘事件の記述へ。
現場は上空を乱舞するヘリコプターの回転翼の音、轟音を発して山荘の屋根をベコベコに叩き潰している大鉄球の破壊音、犯人たちの間断ない発砲と応謝する機動隊の催涙ガス銃の発射音、クレーン車や放水車の絶え間ないディーゼルエンジンの唸り、声を嗄らして号令をかける指揮官たちの胴間声などなど、騒音の坩堝だ。

催涙ガスと大楯と放水、そして鉄球が、九日間の対峙に終止符を打つ!

「あなたは牟田さんですか? 牟田泰子さんですか?」その女性はうなずいてかすかな声で答える。「はい、牟田泰子です」ようし、間違いない。泰子さんだ。泰子さんは生きていた。「あさま山荘事件」警備の最大目的であった人質の救出という、奇蹟に近い困難な任務を、我々は、長野県警も警視庁も、警察庁も神奈川県警も、皆小異を捨てて大同につき、心を一つにして見事やり遂げたんだ。

二名(民間人入れると三名)の殉職者を出しながらも人質救出に成功。昭和元禄の武士にしてボーダーレス警備指揮官の見た現場がここにある。


<現場のリーダーシップ編>
本書、実例と寸言に満ちたリーダーシップ論でもある。
「上司の慶事より部下の弔事」、これこそが人心収攬、連帯意識高揚の秘訣なのだ。

後藤田長官「ワシの人使いには三つの原則がある。明らかにワシより能力が上の者には何もいわん。明らかに劣っている者は叱ってもしょうがないから誉めて使う。ワシと同様の能力ありと見たら徹底的に叱ってしごくんじゃ」

極限状況下で二十四時間共に過す現場では、人間関係が濃密だから、下からみていると上の人の人格は二、三日で丸見えになってしまう。
「従卒の目に英雄なし」とはよくいったものだ。あらゆる点で優れた理想の上司なんてこの世には存在しない。司令官の長所、短所を早くのみこむことが幕僚の大切な心得だ。

湯呑みに飯を盛ってしまってテヘぺロしたり、「赤軍だよ、全員集合」と言ってみたり、修羅場に沸き起こる笑いは清涼剤となる。
「テレビに映らなかった強敵は、零下十五度の寒さと全国から集まった空前のマスコミ報道陣だった」にもあるように、防寒と記者クラブや野次馬の統制にも忙殺される。

軽井沢署の警備本部が極限状況の中にあって笑うゆとりを保っていたことについては、私も貢献したが、野中県警本部長がバランス感覚と自己統制能力に優れ、終始冷静を保っていたこと、それに幕僚団長の丸山参事官がユーモア感覚と本能的にネアカな楽観主義者だったことによるところ、大だった。

この人(野中本部長)には指揮官適格性がある。黙ってはいるがよくわかっていて、FBI方式も受け入れたし、私という人間を信頼して、作戦にしても広報の方針にしても私たちに任せてくれている。
主将と軍師との人間関係にとって不可欠なものは相互信頼だ。

警備実施の指揮官というものは、いわばオーケストラの指揮者と同じである。コンダクターがすべての楽器の出す音とそのタイミングを頭で暗譜しているように、警備指揮官は”槍先”のことから後方支援のロジスティックスまで全部掌握していなくてはいけない。

沈思果断、寡黙だが指揮官にとって最も大切な資質、「責任を負う覚悟での決断」の出来る県警察本部長である。これは将器だ。

<トホホ編>
警察庁の親心は有難いけれど、全然実情に合わないんだな、これが。

<ホウレンソウ編>
「昨夜切ったのを確認したと言ったのはですね、送電を切ったという意味でして……」