あえて短い言葉で表現するなら……どんなに苦しい局面でも決してあきらめず、他人を思いやり、その言葉と行動で人を動かす力があるかその"人間力"を徹底的に調べ上げる試験だったのである。
963名の宇宙飛行士候補者から選び抜かれた最終候補者10名。
彼らが闘った2週間にわたる最終選抜試験を、簡潔明快な躍動感ある筆致で描き出す。読ませる力があるあたりはさすがNHKの制作者たちだ。
名誉のために研究員、パイロット、医師、誰もがうらやむキャリアをなげうってまで宇宙飛行士に挑戦する候補者たち。
候補者が闘っていたのは他の候補者ではなく、自分の中の「宇宙飛行士になる覚悟」であったのだ。宇宙飛行士という生き方の現実を知って、なお潰えぬ憧れの強さに打たれた。
選考の結果、2名(のち+1名)の宇宙飛行士が選ばれた時の感動。
この過酷な試験にくらべれば就活なんぞナンボのもんじゃいという気持ちになれるだろう。