【概要】
著者(監督):ダニエル・ソカッチ 鬼澤忍 訳
アメリカ人なので比較的フラットな視点でイスラエルの近現代史およびイスラエル問題についてカジュアルめに解説する。エルサレム旧市街図解もあり。曰く「イスラエルは、要するにグレー」で、どちらかが100%正しいということはない。
コラムで紹介されていた少年の解説がわかりやすいのだが、土地所有の起源をいつの時代にとるかでどちらに肩入れするか変わってきてしまうのだ。3000年前に住んでいたユダヤ人か、ディアスポラした後に住んでいたアラブ人か。
ディアスポラにはじまる三千年の迫害の歴史、そして極めつけのホロコーストが世界の(主に)西側諸国の同情を集めシオニズム計画を加速させた。1948年の建国後は数度にわたるアラブ諸国との戦争で徐々に領土を拡大。エジプトと休戦した後もシリア、レバノンなどの隣国とのドンパチ、イスラーム過激派によるテロが続く。三日月エリア内でもヨルダン川西岸地区への入植、ガザ地区との係争など、きな臭い雰囲気は残っていた。90年代のPLOとの和平ムードや昨今のサウジとの接近など、ときおり良化しそうな気配が漂うこともあったのだが、それも空しく、またもや戦火にまみれてしまったようだ。
【詳細】
<目次>
第1部 何が起こっているのか?
- 1章 ユダヤ人とイスラエル
- 2章 シオニストの思想
- 3章 ちょっと待て、ここには人がいる
- 4章 イギリス人がやってくる
- 5章 イスラエルとナクバ
- 6章 追い出された人びと
- 7章 1950年代
- 8章 ビッグバン
- 9章 激動
- 10章 振り落とす
- 11章 イスラエルはラビンを待っている
- 12章 賢明な希望が潰えて
- 13章 ブルドーザーの最後の不意打ち
- 14章 民主主義の後退
第2部 イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?
- 15章 地図は領土ではない
- 16章 イスラエルのアラブ系国民
- 17章 恋物語?
- 18章 入植地
- 19章 BDSについて語るときにわれわれが語ること
- 20章 Aで始まる例の単語
- 21章 Aで始まるもう一つの単語
- 22章 中心地の赤い雌牛
- 23章 希望を持つ理由
<メモ>
差別を逃れて集まったはずがユダヤ人コミュニティ内でも出自によって新たな差別が発生するなど、人間というやつは学ばないのお…。