【概要】
著者(監督):?
36時間にわたるインタビューでチャンアベの政治観その他の一部を明らかにする。ムッとするような質問もあえて投げてみるが、けっこう答えてくれる。やっててよかった生前インタビュー。
安倍氏の評価は後世の判断にゆだねるとして、政治家や政治への解像度が上がり、考え方が少し変わるかも。キーワードは「責任」。外交、経済、行政、教育など多岐にわたる業務をこなすには超人的な体力と信念が要りそうだなあ。
自己弁護のそしりを免れないとはいえ、各種法案の解説や裏事情、財務省をはじめとする「官僚の無謬性」や民主党へのdis、そして国内外の政治家評(オバマ、トランプ、プーさん[ぷーちんときんぺー]、メルケル、百合子など)が面白い。「トランプは常識を超えてい」るらしい。
見ての通り表紙がジューシーで、最後の頁のあきえとの写真が泣ける。
【詳細】
<目次>
- 第1章 コロナ蔓延―ダイヤモンド・プリンセスから辞任まで
- 第2章 総理大臣へ!―第1次内閣発足から退陣、再登板まで
- 第3章 第2次内閣発足―TPP、アベノミクス、靖国参拝
- 第4章 官邸一強―集団的自衛権行使容認へ、国家安全保障局、内閣人事局発足
- 第5章 歴史認識―戦後70年談話と安全保障関連法
- 第6章 海外首脳たちのこと―オバマ、トランプ、メルケル、習近平、プーチン
- 第7章 戦後外交の総決算―北方領土交渉、天皇退位
- 第8章 ゆらぐ一強―トランプ大統領誕生、森友・加計問題、小池新党の脅威
- 第9章 揺れる外交―米朝首脳会談、中国「一帯一路」構想、北方領土交渉
- 第10章 新元号「令和」へ―トランプ来日、ハメネイ師との会談、韓国、GSOMIA破棄へ
- 終章 憲政史上最長の長期政権が実現できた理由
- 資料 弔辞、追悼演説など
<メモ>
- 第一次内閣の反省を生かし、憲法改正や拉致問題よりもまずは経済政策を優先したらしい。健康問題には何とか折り合いをつけていた模様だ。晋三の心労、鍛造する晋三。
- 何事も100点は無理基本的に褒められることはない。ぶーぶー後から外から言う側は楽。他部門調整が多い。
- 曰く、官邸主導は当たり前。官僚が考え、政治家が決めるのが基本。「責任を取るのは首相」なので官僚には自ら提案をしてほしいとのこと。
- 基本的には祖父同様に国防・安全保障重視。「国民の生命と財産」を守りたいんや。でも、就任直後は経済に注力したらしい。中国の野望にはかなりの警戒感を発しているが、ロシアには甘め。
- ある程度太くない国の未来とか考えられないので、もしかしたら世襲政治家もありか、とかちょっと思ったりしちゃったり。
- 論功行賞(≒人事)は党組織を率いる者としておろそかにはできない。ポストの有無に加え、メンツ・貸し借りなどの人間臭い要素が充満している。
- 政治家評が面白い。法律家然としてあまり面白みのないオバマ、「トランプは常識を超えています」でおなじみトランプ(電話長い、ビジネス脳なので意外と軍事行動には慎重)、野望を秘めたきんぺー、意外とフランクなプーチン、ちょこちょこ出てくるメルケルなど、なかなか聞けない生の声が聞ける。公〇党との付き合い方、百合子の「やってる感」の巧みさなどにも言及しておる。
- オバマやトランプ好みの演出は意識的に行っていたらしい。ゴルフや会食など時間を共有することがやはり親睦には大事。話題の事前レクで情報を仕入れたり、卑近な話題(ピコ太郎)で距離を詰めたり、店選びに参加していることをあえて伝えたりと人の心を動かす努力が肝要。アメリカ議会での演説でも、過去の演説を引用したり自身のアメリカに関するパーソナルエピソードを入れて戦略的に臨んだ模様。
- アベ・マリオ、星野源コラボの内幕もポロリ。
- おスガさんやタローの出現率が高い。そして弔辞を読むのも彼ら。意外と小泉ジュンイチローとはそんなに仲良くなかったらしい。