【概要】
著者(監督):宮下奈都
婚約破棄された主人公がドリフターズ・リストや豆スープなど、人との出会いや日常生活を通じて回復していく「癒し」の物語。いい人が多く、すっきりした読後感がある。
ひっこし・おみこし・たまのこし、「言ってって言ってるって言ってたね」など、何気ない言葉遊び(選び)や、叔母のロッカさんとの掛け合いが小気味よい。
- 桜井さん「あなたが食べものを大事に思って生きているということ、あるいは大事にしていくといいということ」
- あすわ「郁ちゃんにとっての豆を、私も探さなくてはいけないということだ」
- 母「あすわ、毎日のごはんがあなたを助ける。それは間違いのないことよ」
- ロッカさん「がんばれなくても、ええんちゃう?」
【詳細】
<メモ>
穏やかな気持ちで息ができるようになった。私がそう望んだからだ。ゆるやかによろこび、そっと悲しむような、穏やかな毎日を今は求めたいと思う。感情に振りまわされすぎないで、やりたいことをこつこつとやれるように。
私が選ぶもので私はつくられる。好んで選んだものも、ちょっと無理をして選んだも
のも、選ぼうとしなくても無意識のうちに選び取っていたものも。譲さんを選んだのも、そして譲さんに選ばれなかったのも、私だ。私に起こった出来事だ。それらは私の一部になる。私の身体の、私の心の、私の人生の。
それだけじゃない。選ばなくてもあるもの、選びたくても選べないもの。私は私なの
だ。京じゃないし、郁ちゃんじゃないし、 ロッカさんでもない。最初から手にしていたもの、降ってくるもの、躓くもの。いろいろなことが起きたり、起きなかったり。できるだけ、選んでいく。こうありたいと願うほうへ。それが文字になって記されているのがドリフターズ・リストなんじゃないか。 吊革につかまって、反対の手でポケットの上からリストを撫でてみる。こうありたいと願うことこそが私をつくっていく。