【概要】
著者(監督):高野秀行
約25の外国語(英語、フランス語、コンゴ語、タイ語、ビルマ語、中国語、ワ語…)を学んできた著者が、20代の「胡散臭い人間」だった時代を言語的な側面にフォーカスして振り返る。珍獣を探したり、アブない組織へ接近したり、アヘン中毒になったり、衝撃のグローバルコミュ力で世界をブラブラしていたあの頃。「要するに私にとって言語の学習と使用はあくまで探検的活動の道具」だが、「でも必ずそれぞれが一つの独立した小宇宙となっている」とのこと。
紛失物の再発行に粘りに粘ったインドでの原体験で、「「一見不可能に思えることも頑張ればなんとか打開できる」という妙な自信を得てしまったこと。「話したいことがあれば語学はできるようになる」とわかったこと。この二つの確信が、その後の私の生き方を変えていくことにな」った。
シルヴィ先生との生きたフランス語修行、ザイール人ウィリーとのコンゴ語修行、女子大生とのタイ語、クンサー軍アジトでのビルマ語、莫先生「地道ditao」授業など、知らない言語を一心不乱に学んでいたひたむきさや必死さを体験した気になれる。笑いと言語学的なTipsがごちゃ混ぜになっており面白い。
【詳細】
<目次>
- 第一章 語学ビッグバン前夜(インド篇)
- 第二章 怪獣体験と語学ビッグバン(アフリカ篇)
- 第三章 ロマンス諸語との闘い(ヨーロッパ・南米篇)
- 第四章 ゴールデン・トライアングルの多言語世界(東南アジア篇)
- 第五章 世界で最も不思議な「国」の言語(中国・ワ州篇)
<メモ>
〇言語Tips
- 「肝心の本番では相手が答えを教えてくれる」
- 「英語の「正しさ」にこだわる人は少ない」
- 「話したいことがあれば英語は話せる」
- テープ起こし学習法が当時の著者には有効だった。
- 「外国旅行で何か語学を上達させたいと思ったら、決して自分より(できる人)と一緒に行ってはいけない」
- 言語に合わせて「ノリを変える」
- 「ネイティヴの例文読誦を自分で反復練習する」というやり方がベストの学習法
- 「コミュニケーションをとるための言語と仲良くなるための言語。外国へ行って現地の人と交わるとき、この二種類の言語が使えれば最強なのだ。いわば「語学の二刀流」、これを使いこなす快感を知ってしまった」
- 言語観のイメージ図:宗主国言語がピラミッドの頂点でローカル共通語は中間、その下に各種ローカル語。格上は下に降りてくるが、格下は昇格しない。
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「習ったことの大半はすぐ忘れてしまい、その場かぎりだ。それでもいいのである。友好関係を築くためだけなのだから。ただ、もし覚えていて次回会う機会があれば、もちろん使ってウケをとる」。
⇒ローカル言語は地元民との距離を縮めるのに有効だが、あまり上手くないと人間関係の上下につながるデメリットも(赤ちゃん語で話しているようなもの)。
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民族・言語集団・世界観は不可分。
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スペイン語は宗主国語としての歴史が長いので、某世界共通語よりも洗練されている模様。
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IT化してもコミュニケーションする言語力は必要。
著者、写真を見るといかにも80-90年代の超イケてない見た目のもじゃもじゃ丸メガネのシャツイン日本人(だった)。本業(?)は辺境めぐりのノンフィクション作家だ。