Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

映画を早送りで見る人たち 

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

【概要】
著者(監督):稲田豊

ストーリー性のある映像コンテンツに対し、倍速視聴や10秒飛ばしを悪気なく駆使する若年層の割合が増えてきている。その謎を解き明かすため昨今の社会環境や映像技術、価値観の変化などの環境影響を考察する。

☆倍速視聴・10秒飛ばしといった習慣が発生した理由

  • ①映像作品の供給過多
  • ②現代人の多忙に端を発するコスパ(タイパ)志向
  • ③セリフですべてを説明する映像作品が増えたこと

 

ただ、それでもやはり思うのだ。

映画を早送りで観るなんて、一体どういうことなのだろう?

彼らへの理解(同情?)を示しながらも嫌悪感や違和感を隠さない著者。その考えには頷きすぎて首がもげそうになった。コスパ至上主義の旗のもと、自分が理解できなければ作品が悪い式の思考でひたすら作品鑑賞ではなく消費に走る彼らは、作品理解がその深層に達することができず表層で止まっている感じだ。芸術性がなければ倍速でもOK(講義やニュースなど)だと思うが、忙しい人ほど意識的に心の豊かさを涵養せねばならぬ。

 

【詳細】
<目次>

  • 序章 大いなる違和感
  • 第1章 早送りする人たち―鑑賞から消費へ
  • 第2章 セリフで全部説明してほしい人たち―みんなに優しいオープンワールド
  • 第3章 失敗したくない人たち―個性の呪縛と「タイパ」至上主義
  • 第4章 好きなものを貶されたくない人たち―「快適主義」という怪物
  • 第5章 無関心なお客様たち―技術進化の行き着いた先

<メモ>

  • 超訳△△」、「〇〇分でわかる◇◇」などのお手軽感を売りにする書籍、断定口調で空疎な内容を語るYouTuber(ひ〇ゆき、ホリ〇モン)、『帝国皇帝に転生して無双してるんだが』式のラノベタイトル、登場人物のモノローグ過多なマンガ・アニメの増加、速読やビジネス書・自己啓発書の濫発(果てはそれらの要約サービスまで)…こういった「情報過多・説明過多・無駄のないテンポの映像コンテンツ」が増えた結果、「背伸び」しない若者が増えてきている。
  • 映像ビジネスの巨大化やサブスク映像視聴の一般化に伴い、作品に触れる裾野が広がったことによる視聴者のワガママ化の顕在化は由々しき問題。そういった低レベルな鑑賞者が増えると、彼らの好みに合わない作品は低いレビュー点数が付けられ、悪貨が良貨を駆逐してしまう懸念がある。
  • 意識的な沈黙の意味とか、挙措の「間」とか、表情・声色の変化とか、言語や音声データには還元されない非言語的コミュニケーションの豊饒さが失われる。
  • 映像視聴史・技術史を概観すると、映像技術の発展による生活や嗜好の変化は必然。その事実を分析し、理解・納得した上で

ただ、それでもやはり思うのだ。

映画を早送りで観るなんて、一体どういうことなのだろう?

どういうことなのだろう?

 

〇オタクになりたいはずなのに

ところが、彼らは回り道を嫌う。膨大な時間を費やして何百本、何千本もの作品を観て、読んで、たくさんのハズレを掴まされて、そのなかで鑑賞力が磨かれ、博識になり、やがて生涯の傑作に出会い、かつその分野のエキスパートになる―—というプロセスを、決して踏みたがらない。

 

そこでもっとも言いやすいのが、「わかんなかった(だから、つまらない)」だ。論理的な説明やエビデンスがいらない。そんな話を、映画宣伝マンの知り合いに投げてみたところ、毒舌家の彼は言った。「バカでも言える感想ですね、それ」と。

 

庵野秀明「謎に包まれた者を喜ぶ人が少なくなってきてる」

 

彼らはとにかく余裕がない。時間的にも、金銭的にも。そして何より精神的に。
第1章の記述を訂正しようと思う。彼らは不気味な宇宙人ではなかった。単に、筆者と生まれた時代が違っただけだ。