【概要】
著者(監督):諸藤達也
ベンゼン環同士のドッキング(カップリング)を軸に、有機化学を電子プラス/マイナスの結合に単純化して平易に解説する。ノーベル賞受賞者の紹介もサブテーマに据え、縦横に話を展開する。リビングアニオン重合や立体障害などのミクロな視点、錯体化学への興味が深まる。
聞き役の女の子がかわいい。
【詳細】
<目次>
- 第1週 有機化学はつまらない?
- 第2週 六角形をつなぐ旅のはじまり
- 第3週 未来へ紡ぐ山本明夫 -働くニッケル-
- 第4週 革命の時 -熊田・玉尾・コリュ-カップリング-
- 第5週 周期表の旅人
- 第6週 人類の到達点
- 第7週 研究はどのように評価される?
- 第8週 究極の反応を目指して
- 第9週 火星には旗が立っていた -ヴァンヘルデン・バ-バ-グカップリング-
- 第10週 夢の反応 -村井反応-
- 第11週 輝く星 キ-ス・ファニュ-
- 第12週 定跡を外す ArPTZ+
- 第13週 旅は終わらない
<メモ>
ハロゲン「電子クレヨ!!」リチウム「電子アゲル!!」、「ニッケル錯体はコミュ力抜群のナイスガイ」などのカジュアルな擬人化と登場人物の対話式図解により、主にベンゼン環のカップリングに関するイメージや、科学研究に関する基礎知識が得られる。
1970年代はまさに有機化学黄金期だったのだなあと感じられた。あくなき効率化(簡易化・安価化・反応条件の穏和化)への探求は今も進められているのである。
- ウルマンカップリング(1901):アリールハライドに銅を加えて200℃以上に加熱することでそれら同士をカップリング。
- 山田の発見(1970):アリールハライドにNiが入り込む「酸化的付加」とそれら同士を結合する「酸化的脱離」の発見。
- 熊田・玉尾・コリューカップリング(1972):Grignard試薬とアリールハライドをNi触媒を使ってカップリング
- 根岸の発見(1976):Grignard試薬⇒Zn試薬、Ni触媒⇒Pd触媒に変更することで合成できるビアリール化合物が大きく広がることの発見。
- 鈴木・宮浦カップリング(1979):B試薬とアリールハライドをPd触媒と塩基を使用してカップリング。
反応が起こるメカニズムは本当に複雑すぎて、数学のように完全に明らかにすることは誰にもできていない。だから、どんな賢い研究者も最後はカンで試薬を混ぜてみるんだ。