著者:平山令明
(新訂版)この本での主役は電子である。最も重要な登場人物(?)である電子が、この本の大切なキーワードである。電子というものの性質や挙動が理解できれば、化学のかな
りの部分が理解できるからである。分子中や分子間の電子の動きが予測できれば、化学が理解できたと言ってよい。もう1つのキーワードは立体構造である。分子は原子が立体的に組み立てられた三次元構築物であり、立体構造によってその分子の働きが大きく左右される。電子の挙動と立体的な条件、これらが化学反応を決定する上で非常に重要である。
これら2つのキーワードを軸にして物語を展開していきたい。
電子大好きマンが、大学ちょい初等レベルにて分子内での電子の動きについて平易に解説する。大学有機化学のπ結合やsp3軌道(混成軌道)、電子の非局在化、分極によるvdW力、反応機構などなどが分らなかった人はこれを読んで再突撃することを勧める。若干お小言が多いのが気になるが…。
「ベンゼン環は電子が遊びまわるには適した場所である。いわば遊び場である」な℃の擬人化の数々から、著者の電子愛にビリビリっとくるんだなあ( ˘ω˘ )
(新訂版)
寂しくても独立していく電子に、健気さと頼もしさを感じる。自然は妥協を伴う安住より、過酷であっても発展性を重んじる。今の日本とはまったく反対である。
「電子は寂しがり屋」で、「1つぽつんといるのが嫌いであり、できたら「2つがペアになりたがっている。この電子の性質が、化学結合の最も基本になっていることも繰り返し述べてきた。しかし、電子は単なる寂しがり屋の甘えん坊ではない。電子は新天地や独立する機会があれば、進んで寂しさをこらえて独立していくのだ。そしてそこで積極的に他の原子からの電子とペアを組み化学結合を作り、新境地を開いていく。私たちをとり囲む森羅万象が、さまざまな化学物質で彩られているのは、実は電子のこの性質によっているのだ。
ぜひ若い人たちには偏見のない判断のできる理性と感性を養って貰いたい。よいものをよいと言えるのは意外と簡単ではない。よいものがわかる見識と自分の判断に責任が持てる自信が必要である。
(旧版)2015
無味乾燥な化学反応を、電子が動き回る様子をこま送りで見ると、(略)
そこに展開されるドラマが生き生きと見えてくる。
電子は活発で、無邪気で、ある程度わがままなところがある妖精のようなものである。しかしその性質さえ見抜けば文句も言わずに機嫌よく働いてくれる便利な妖精でもある。この可愛い電子を上手に操作するための科学や技術が化学である。
新訂版 第一刷 誤植p.206 下から10行目:鉱酸⇒強酸