【概要】
著者(監督):江上剛
「少壮者に貴ぶ所は敢為の気力である」、そして、「事業の進歩発達にもっとも害するものは、青年の過失でなくて、老人の跋扈である」でおなじみ伊庭貞剛伝。
京での攘夷運動や御所の警備に参加したり、北海道の司法界でそこそこの活躍をするも、不完全燃焼でなかなか羽ばたけなかったTEIGO。「しかし、自分のいるべき場所がここなのかは判然としない。もっと激しく自分を燃え上がらせるものがあるはずと思っていた」ところ、住友に入社してしばらくすると自分の役目がわかった。
「煙害、農民暴動。そして別子銅山内部の抗争と三つの問題が同時に発生し、今や住友は八方塞がりの袋小路に押し込められていた」☜これや。
それは、住友近代化の礎となった宰平に引導を渡し、行き詰った問題の解決を図ることだった。「満溢を懼るれば、すなわち江海の百川に下るを思う」といった謙虚さを重んじる教育と人生の苦労が功を奏したのかも。
「私がこの別子でやったことは、お山に登ることと木を植えることだけかな」との台詞にもあるように、労使問題や地域住民との和解とか、はげ山への植林とか工場の移転とか、今を時めく「持続可能性」の精神を近代住友に植え直した。企業の存在意義がかつてないほどに問われている現代において、彼が再興した「自利利他公私一如」の精神に立ち返ってみるべきかもしれない。ただ、現代編のプロローグ、エピローグはESG等の現代的視点が入りすぎてちょっと説教臭いかも。
【詳細】
<目次>
- プロローグ
- 第一章 出会い
- 第二章 尊王攘夷
- 第三章 明治維新
- 第四章 司法官の道
- 第五章 住友入社
- 第六章 本店支配人
- 第七章 煙害問題発生
- 第八章 銅山へ
- 第九章 お山暮らし
- 第十章 宰平辞任
- 第十一章 四阪島移転。そして引退
- エピローグ
- あとがき
<メモ>
禅僧・峩山や小吉といった便利キャラを活用し話を進めていくので読みやすい。先輩の田中正造も登場。住友Gでも広告塔になっている模様だ。
【突然のユリアヌス】
大事なのは意図であって、結果ではない(工場移転は大気汚染に対しては逆効果だったが)。
どうか、諸君、これだけは覚えていて貰いたい。われわれの意図がこの世で実現せられずとも、人間にとって意味があるのはその意図であって、結果ではないということを。
COTENでちょっと紹介されてたぞい。