【概要】
著者(監督):石弘之
昨今の新型コロナでおなじみ。黒死病、インフルエンザ、結核、はしかなど、人間の歴史はウイルス等との闘いであり、共進化でもあった。
近年の感染症に関する一般日本人の呑気さや後進性に警鐘を鳴らす。ワクチンはちゃんと接種しないとダメよ。
【詳細】
<目次>
- まえがき――「幸運な先祖」の子孫たち
- 序 章 エボラ出血熱とデング熱――突発的流行の衝撃
- 第一部 二〇万年の地球環境史と感染症
- 第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
- 第二章 環境変化が招いた感染症
- 第三章 人類の移動と病気の拡散
- 第二部 人類と共存するウイルスと細菌
- 第四章 ピロリ菌は敵か味方か――胃がんの原因をめぐって
- 第五章 寄生虫が人を操る?――猫とトキソプラズマ原虫
- 第六章 性交渉とウイルスの関係――セックスががんの原因になる?
- 第七章 八種類あるヘルペスウイルス――感染者は世界で一億人
- 第八章 世界で増殖するインフルエンザ――過密社会に適応したウイルス
- 第九章 エイズ感染は一〇〇年前から――増えつづける日本での患者数
- 第三部 日本列島史と感染症の現状
- 第十章 ハシカを侮る後進国・日本
- 第十一章 風疹の流行を止められない日本
- 第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
- 第十三章 弥生人が持ち込んだ結核
- 終 章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?
- あとがき――病気の環境史への挑戦
<メモ>
私たちが忘れていたのは、感染症の原因となる微生物も、四〇億年前からずっと途切れることなくつづいてきた「幸運な先祖」の子孫ということだ。人間が免疫力を高め、防疫体制を強化すれば、微生物もそれに対抗する手段を身につけてきた。
人間が次々と打つ手は、微生物からみれば生存が脅かされる重大な危機である。人が病気と必死に戦うように、彼らもまた薬剤に対する耐性を獲得し、強い毒性を持つ系統に入れ替わって戦っているのだ。まさに「軍拡競争」である。
- ジョナさん「新興感染症の75%は動物に起源があり、森林破壊によって本来の生息地を追われた動物たちが人里に押し出されて病原体を拡散させるようになった」
- アフリカの呪術師さん「人間が本来近づくべきではない場で木々を切り倒したために、目を覚ました神々が怒って罰として病気を与えた」
- 遺伝子はそのままでは垂直移動しかしないが、ウイルスは遺伝子を水平移動させる。
- 通網が発達した稠密都市は感染症の温床。
とくに、軍隊は若い男性が主体の均一的な集団であり、長時間生活を共にするために感染症が蔓延しやすく、天然痘、マラリア、ベスト、赤痢、コレラ、チフス、結核、インフルエンザ、梅毒、淋病、エイズなどは、軍隊で繰り返し流行が起きた。
- ペストとデカメロンと中世社会の崩壊。
- HPVが語る上半身と下半身の交流。
- 感染力と毒性のバランス。長期的には平和共存が有利。
- ウイルス人類学の勃興。