Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

十二国記

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

【概要】
著者(監督):小野不由美

①月の影 影の海

(上)東洋風ファンタジー。説明もないまま異界に放り込まれ、獣ながらの生活を余儀なくされる。人里に降りたら降りたで裏切りにつぐ裏切り。荒んでいく陽子さん。かわいそう。

(下)楽俊と延王のおかげで一挙に物語が進み始める。マインドセットや口調からもお分かりの通り、たくましく成長した陽子さん。壮大な国造りの物語と、麒麟と王の緊密な関係。なお陽子さん、王として即位した模様。続巻も読んでみよう。

②風の海 迷宮の岸

黄海にコンニチハした泰麒が泰王を選ぶ。楽園。自分に自信が持てない点、親近感。後半の怒涛の流れには完全に騙された。息をのむような心理描書にぞわぞわした。内容は違えどこういうヒヤヒヤ体験は誰しも記憶があるのでは。

③東の海神 西の滄海

ツンデレ延麒拉致事件顛末記。延王と延麒バディの黎明期が描かれる。普段はちゃらんぽらんでもいざというときは頼りになる、胆力のある切れ者。「暢気者だが、莫迦ではない」「有能だが出鱈目」そんな器の人間はなかなかいないんだよなあ。尚隆に臣下がタメ口なのが面白い。一方の斡由氏が完全にパワハラ上司で泣ける。

④風の万里 黎明の空

(上)見た目十代後半の少女たちの物語。思い思いの方法で慶国めざして出国する。みんなどこか欠けているところがあるよね。相変わらず陽子さんがイケメン。あと①のときも思ったが、いじめ描写になかなか胸を衝かれるところがあるよね。

(下)上巻の三つの糸が縒り合されていく。陽子さんが猛烈スカウトに励む。鈴や祥瓊が成長していくのに地味に感動したりする。モンスターエンジンよろしく「……私だ」からの三名名乗りラッシュはスッキリした。自分を哀れんだり人への感謝を忘れてはいけないのだ。そして踏ん切りも。陽子さんにおかれましては、ずっとこの出来事を思い出し続けて延王に匹敵する名君になっていただきたい。

陽子さんの心境の変化。「……なんて不甲斐ない王なんだ、私は……」⇒「なんだか、ちょっとだけ踏ん切りがついた。——いろいろなことに迷っていたけど」

丕緒の鳥

王も麒麟も出てこない、名もなき官吏たちの地味な人生の一コマ。物語世界の隙間をより緻密にしてくれる効果はあるだろうが、ぶっちゃけ飛ばしても問題ない。「青条の蘭」は結構好きかも。

⑥図南の翼

お待ちかね珠晶の登極物語。かなりストレスフリーに読めるのでは。持ち前の幸運とノーブレス・オブリージュが王の器であることを雄弁に示している。鼻っ柱の強い珠晶が大人たちの論理に悩みながらも剛毅に進んでいくさまは痛快。

⑦華胥の幽夢

作品世界の厚みマシマシに貢献する短編集。傾き滅びる国、栄え続ける国、新たに勃興する国…いろいろあるけども、この作品世界の王は実に難儀な仕事であることを改めて思った。政治家・為政者の権力と責任、意外と短命な王の命(陽子さんは千年王朝築くと信じてるで!)。
『乗月』や『書簡』などアニメで触れたエピソードもあっていい感じよ。慶、雁、戴、恭なんかはよく出るけど、漣とか芳とか柳とかはあんまり出ないよね。

⑧黄昏の岸 暁の天

泰麒救出回。まあまあ暗いが最終的には一縷の望みが見えた。
陽子さんが国連的機関や大使館を構想するのは彼女のアウトサイダー的な視点が生かされていて良い。駆け出し王のひたむきさと無鉄砲さがうまい方向に転がっていくといいのだが。さすがに尚隆に楯突く辺りは登場人物たちと同様にヒヤリとさせられたが、各国の王と麒麟たちの共同泰麒捜索・救出ミッションの実施は熱い。国母や天帝・天綱などの世界の理に近づいたことも見逃せない(天帝の存否・無謬性も気になる)。
最新刊と『魔性の子』も読まねばなるまいて。

魔性の子

⑧黄昏の岸 暁の天 の蓬莱(日本)サイドの物語。高里こと泰麒in蓬莱の周りで謎の事件が続発。日常に置いていかれた広瀬さんはアニメ版の杉本さんの元ネタになったとか。この巻から読んだら???な用語や演出も、十二国記の世界に馴染んでから読むとニヤニヤしながら読めるのでは。麒とか王とか蓬山とか、めっちゃキーワード小出しにしてくる。読んだことないけど『残穢』とか『屍鬼』とかのホラーも書いてるんだね、著者。

⑨白銀の墟 玄の月

(一)ついに謎まみれだった戴の国に光が。⑧黄昏の岸 暁の天 の直後の話で、泰麒と李斎を中心に進行。荒廃した戴国に乗り込んで、人も金もないところからどのように国を建て直すのか気になる。(一)は鴻基ルートと淋宇ルートに分かれたところまで。

(二)二方面作戦を続ける中で少しずつ情報が集まってくる。かたやハッタリかたや潜伏&捜索。生気を失った王宮と民草の苦難。そこに驍宗死亡説が。その真偽やいかに。

(三)かたや王宮内で勢力拡大、かたや文州で軍勢集め。そしてやっぱり生きてた驍宗様。新月お供えおじさんの挿話がここで生きてこようとは。受けた恩義を忘れるな。

(四)蹶起するが案外うまくいかず…。傷つき斃れる仲間の無念とともに、意地と忠義の処刑場乱入。そこで泰麒の必殺・転変。泰麒さん絡むと読者のミスリード誘いがち。④の陽子さんを見るようで熱い。歴史書風の「大いに喪う」の塩記述がまたね。登場人物の苦労を分かち合うかのようで、四巻は長かった…。


【詳細】
<既巻リスト>

読んだ順ね。

  • ①月の影 影の海(上・下)
  • ②風の海 迷宮の岸
  • ③東の海神 西の滄海
  • ④風の万里 黎明の空(上・下)
  • 丕緒の鳥
  • ⑥図南の翼
  • ⑦華胥の幽夢
  • ⑧黄昏の岸 暁の天
  • 魔性の子
  • ⑨白銀の墟 玄の月(一~四)

 

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<メモ>

  • 読む順番は①⇒③⇒④⇒⑥⇒②⇒⑦⇒⑧⇒⓪⇒⑨+⑤みたいな感じかな?

 

①月の影 影の海(上・下)

もといた世界を好きだったとは言わない。それでも離れてみれば、ただ懐かしいばかりで涙が出てくる。もう一度帰れるなら何でもする。帰ったら二度と離れない。
「家に……帰りたいよぉ」

 

 そんな陽子さんだったが…☟

血の臭いも骨肉を断つ感触も、とっくの昔に馴染んでいたし、人の死体を見て心を動かされるほどの繊細さなど残っていない。

つよ。

 

「おいらはラクシュンってもんだ。お前は?」

待ってました楽俊さん!!!

 

「お前はよく頑張ったよ、陽子。いい感じになったな」

 

「足したらちょうど良くなるんだろうさ。お前だけでも足りねえ、景麒だけでも足りねえ。だから王と麒麟と、二つで生きるように作られてるんじゃねえのかい。麒麟もいわば半獣だ。半獣の陽子と、半獣の麒麟と、それでちょうどいいんだろうさ。きっと延王と延麒もそうなんだと思う」
陽子はただ俯いた。
「王になるってんで有頂天になる人間だっているだろう。民のことを考えて怖じ気づく分別があるだけでも、お前は玉座につく資格があるよ」

 

「ここで帰ったら、きっと後悔すると思うけど、帰らなくてもきっと後悔すると思う。どっちにいても絶対に片方が懐かしい。どっちも取りたいけど片方しか選べない」
そっと温かいものが頬に触れた。それが頬を伝ったものを拭ってくれる。
「……楽俊」
「振り向くなよ。いまちょっと障りがあるからな」
笑みが零れて、それと一緒に涙が零れた。
「笑うな。仕方ねえだろ。ネズミのまんまじゃ手が届かねえんだから」
「……うん」
「あのなぁ、陽子。どっちを選んでいいか分からないときは、自分がやるべきほうを選んでおくんだ。そういうときはどっちを選んでも必ずあとで後悔する。同じ後悔するなら、少しでも軽いほうがいいだろ」
「うん」
やるべきことを選んでおけば、やるべきことを放棄しなかったぶんだけ、後悔が軽くて済む

 

楽俊さん素晴らしすぎないか。聖人(聖獣?)。

ファンタジー界最強のねずみに認定します。

 

②風の海 迷宮の岸

(でももう、ぼくは二度とうちには帰れない)
涙が零れた。
それは郷愁ではなく、愛惜だった。
彼はすでに、別離を受け入れてしまっていた。

 

終わってしまった。
何らかの選定がここでも行なわれ、きっと泰麒の嘘は暴かれ断罪があるだろうと思っていたのに。それがどんな形にせよ、必ず罪を償う機会があるだろうと、そう信じていたのに。
そんなものは──なかった。

 

「分かったろう?」
何が、と問うまでもなかった。
「──麒麟は偽りの誓約など、できはせぬ」
目許を和ませた延の頭を、延麒がぞんざいに叩いた。
「王の分際で見てきたように言うんじゃねえ」

 

泰麒関連のお話は読者のミスリード誘いがち。

 

③東の海神 西の滄海

「俺一人生き延びて小松を再興せよだと? ──笑わせるな! 小松の民を見殺しにして、それで小松を興せとぬかすか。それはいったいどんな国だ。城の中に俺一人で、そこで何をせよと言うのだ!」

 

「尚隆に比べれば、お前は屑だ」
六太は言って踵を返し、部屋を出ようと歩き始める。ふと振り返って、斡由とその背後に控える小臣らを見た。
「言っとくが、これは尚隆を誉めてるわけじゃないからな!」

 

「俺は欲張りだからな。百万の民と百万と一の民なら、後者を選ぶ」

 

「若、と呼ばれるたびに、一緒に託されたものがある。一声ごとに託されて降り積もったものを、俺は連中に返してやれなかった。……もう返す術がない」
尚隆は天を見上げたまま、六太のほうを見ない。反らした胸が大きく息をつくのは、傷が苦しいせいだろうか。
「……連中の願いだ。俺はそれを一身に背負っていながら、もはや降ろす術がない。生きている限りただ意味もなく背負い続けていかねばならない。……いくら能天気の俺でも流石に嫌気が差す……」

 

「亦信と驪媚と子供と。少なくとも三人だ。俺の身体を三人分、お前は刳り取ったに等しいのだぞ」

 
④風の万里 黎明の空(上・下)

陽子さんのホームステイ・女子会。

「同じ愚は犯したくない。だけども、私は同じところに踏み込もうとしている。いまこの時期、王宮からいなくなることがどういうことなのか、分かってる。官だって不満に思うだろう。これだから女王はと、また溜息をつくだろうな」
陽子は軽く笑う。
「みすみす国を荒らすことになるのかも。……でも、このまま官の顔色を窺って右往左往しているだけの王なら、さっさと斃れてしまったほうがいい。そのほうがよほど民のためだ。……このままではいけないんだ、分かってくれないか」

 

「だがお変わりになられた……」
少なくとも陽子は予王と違い、己と闘うことを知っている。予王と同じく、官に畏縮して玉座を疎んじる気配があったが、陽子はそれを己で自覚した。それを乗り越えるために自ら動き始めた。──この差は大きい。

 

鈴さんにお叱りの言葉。

「ばかみてえ。ねえちゃん、単に人より不幸なのを自慢してるだけじゃねえの。べつに不幸じゃなくても、無理やり不幸にするんだよな、そういう奴って」

 

傷つけられるのは苦しいから。やがて痛みにもう無条件に怯えるようになってしまう。苦しみから逃れるために我慢する。そのうちに我慢することで、何かをしている気分になる。……本当は何一つ変わってはいないのに。

 

「人間って、不幸の競争をしてしまうわね。本当は死んでしまった人が一番可哀想なのに、誰かを哀れむと負けたような気がしてしまうの。自分が一番可哀想だって思うのは、自分が一番幸せだって思うことと同じくらい気持ちいいことなのかもしれない。自分を哀れんで、他人を怨んで、本当に一番やらなきゃいけないことから逃げてしまう……」

 

「人が幸せであるのは、その人が恵まれているからではなく、ただその人の心のありようが幸せだからなのです」

 

祥瓊さんにお叱りの言葉。

「知ってなきゃいけなかったん 公主の祥瓊より、おいらのほうが芳に詳しい。それってを着るよりも恥ずかしいことだって、分かってるか?」

 

「私……本当に何も知らないのね」
街の門前で馬車を降りて、宿へと歩く道すがら、祥瓊はぽつりと零した。そうだな、と楽俊の返答は率直だった。
「けど、知らないことなら、これから知ればいい。ぜんぜん問題じゃねえ

 

「景麒だけは、私を信じなくてはいけない」
「……申し訳ありません」
「私を信じない第一の者は、私なんだから。誰が疑わなくても私だけは、私の王たるべき資質を疑っている。猜疑が過ぎて道を失った王だってあっただろう。――だから、たとえ世界中の誰もが私を疑っても、お前だけは私を信じていなければならない

 

「景麒は麒麟とは思えないぐらい厭味だな」
「主がとにかく頑固ですから、これくらいでいいんです」
くつくつと陽子は笑って立ち上がった。
「……急がないと門が閉まる。行こうか」

 

知らないことを知り尽くしてから、なんてことを言っていたら、堯天に戻れるのはいつになるか分からない。 そのくらいものを知らないことが分かった
左様ですか、と景麒は苦笑した。
「きっと区切りを見つけたいだけなんだと自分でも思う。 ──でも、後悔はしていない。私には街に降りてみることが必要だった

 

「──確かに、私は至らない王だ。たくさんの民が殺されていて、重税や苦役や、いろんなことが課せられていることを知らなかった。目の前に見える不幸な人だけ助けようなんて言いぐさが、王としては噴飯ものの話だってことは分かってる。桂桂やその子を助けたって、別の場所で別の子供が死んでいるんだろう。でも、目の前で苦しんでいる人がいて、どうして放置できるんだ?」
「そうね……」
うん、と陽子は軽く頭を下げた。
「不甲斐なくて、済まない……」

 

 知らざあ言って聞かせやしょう!

「王を知っているような口振りだな」
祥瓊と鈴はもう一度顔を見合わせる。先に鈴が口を開いた。
「知ってるわ」
「そんなはずがないだろう!なんでお前みたいな小娘が、王と面識を得る! いい加減なことを言うな‼」
革午が叫ぶ。鈴は言うに言えなくて困惑する。その視線を受けて祥瓊が頷いた。
「──革午とか言ったか。私が王に面識あるのが可怪しいか」
「当たり前だろう!」
言いかけた先を祥瓊は制す。

(中略)
「我は芳国は先の王が公主、祥瓊と申す。 一国の公主が王に面識あっては可怪しいか。我の身許に不審あれば、芳国は恵侯月渓に訊くが宜しかろう。先の峯王が公主、孫昭を御存じか、と」

(中略) 

「あたしは才国琶山が主、翠微君にお仕えする者です。采王御自らのお達しあって慶国は景王をお訪ねしました。不審あらば長閑宮に問い合わせて御覧なさい。御名御璽に不審あればの話だけれど」
革午は旅券と二人の娘を見比べた。娘たちは晴れやかに笑う。
「景王を信じてお待ち。決してあなたたちに悪いようにはしないから」

 

王の風格漂うクライマックス。アニメ版のこのシーンもよかったね。

「──迅雷」
呼ばれて迅雷は思わずさらに一歩を退る。周囲の兵士が響めいて、やはり後退るふうを見せた。
「誰の許しを得て、拓峰に来たか」
「──私は」
「どこの王の宣下あってのことだ」
申し開きをせねば、と思う。思うが声が出なかった。言葉を探して、思考は徒らに空転する。 小娘だと思っていた。先王と同様の凡庸な王だと。だが、迅雷を萎縮させるほどの覇気はどうしたことか。
「それとも禁軍の兵は将軍もろとも辞職して私軍になったか」
「.…主上、私は──」
「お前たちの主はいつから靖共になった! 靖共のために拓峰を攻めると言うなら、禁軍全てを反軍と見做すがよいか!!」

 

「なんだか、ちょっとだけ踏ん切りがついた。──いろんなことに迷っていたけど」
「大変なのね、王さまも」
うん、と陽子はもう一度頷いて、鈴と祥瓊を見比べた。
「二人はどうするんだ、これから?」

 

「地位でもって礼を強要し、他者を踏み躙ることに慣れた者の末路は昇紘の例を見るまでもなく明らかだろう。そしてまた、踏み躙られることを受け入れた人々が辿る道も明らかなように思われる。人は誰の奴隷でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。他者に虐げられても屈することない心、災厄に襲われても挫けることのない心、不正があれば糺すことを恐れず、豺虎に媚びず、──私は慶の民にそんな不羈の民になってほしい。己という領土を治める唯一無二の君主に。そのためにまず、他者の前で毅然と首を上げることから始めてほしい」

 
丕緒の鳥

(落照の獄)

「──刑は刑なきに期す、と言う。刑の目的は人を罰することになく、刑罰を用いないで済むようにすることにある。また、刑措、 とも言う。刑罰を措いて用いないことだが、つまりは天下がよく治まって罪を犯す不心得の罷民が減り、刑罰を用いる必要がなくなることを言う。これが国家の理想であることは論を俟たない。これまで柳はこの理想に向かって進んできたし、あえて理想を捨てる理由がない」

 

「司法の職責は罪人を罰することにあるのではない。教化し反省を促し、立ち直らせることにあるのだ。それを決して忘れぬよう」

 

(青条の蘭)

「済まない。……ありがとう」
標仲は深く頭を下げて、老爺に続いて歩き始めた。
こういうことがあると、背中の荷の重みが増す。青条の着いた丸太一本。たかだかそれだけの荷だが、そこにはあまりにも多くのものが載っていた。
心配してくれた宿の少年、その少年を手許に置いて養っている亭主、標仲のような旅人のために火を焚いていた老夫婦。倒れるまで無理をさせた愛馬、そして、六年もの間、不眠不休で薬を探した包荒と興慶、胥徒たち。

 

若者たちは交代で駆けた。なんだか分からないが、国のためだという。国のために働くことにどんな意義があるのか、荒れ果てた国に生まれ育った彼らには分からない。ただ、無為に時間を過ごしていた彼らは、単純に走り、互いの体力を競うのが楽しかった。
どうせ職もなく、すべきこともない。日銭仕事を探してその日の食事を得るだけだ。これといって楽しみにすることもないし、張り合いを感じることもない。それでも国のためだと言われると、ほんの少し、意義のあることをしている気分になれた。
やがて一人が脱落し、二人が脱落し、最後の一人が五つ先の街に駆け込んだ。さすがの若い体力もそこで尽きた。
「なんだか分からないけど、国のためなんだってさ。王宮に届けないといけないんだ、できるだけ早く」

 

戦うことが道なら、日々を支えるのも道ではないだろうか

 まさにそんな感じの短編集だったね。


⑥図南の翼

「まだるっこしいったら、ありゃしない。大人が行かないのなら、あたしが行くわ
どこへ、と問いかけるように再度振り返った白兎を促して、珠晶は騎獣を連檣の外へと跳躍させる。
「蓬山に行くの。──昇山するのよ」

 

「自己のために他の血が流される。──それが玉座というものだ」
「あたしは……」
言いかけて、珠晶は眼を伏せる。
「そうね。……そうなのかもしれないわ」

 

「囮には、あたしがなるわ。こんな小さな、か弱い子供を、あなたたち、見捨てたりしないわよね?」

 

「あたしは子供で、国の難しい政のことなんて、なんにも分かりゃしないわ。黄海に来て、自分の身一つだって人の助けがなければやっていけないのよ。なのに他人の命まで背負えるはずがないじゃないの! どうせあたしなんて、せいぜい勉強して学校に行って、小役人になるのが関の山だわ。そんなの、当たり前じゃない。あたしが本当に王の器なら、こんなところまで来なくたって、麒麟のほうから迎えに来るわよ!」

 

「それが分かっているなら、なぜ昇山するんだい?」
「義務だと思ったからよ!」
長い黄海の旅、自分が非力だと感じることばかりだった。

「どこかにいるのよ、王が。それが誰かは知らないけど、そいつが黄海は遠いとか怖いとか言って怖じ気づいている間に、どんどん人が死んでるのよ!」

 

連檣は冬だった。恵花の褞袍を失敬し、孟極に乗って家を出た。恭を渡り、黄海に入り、旅をしてきた。 ──その、振り返れば遠大な距離。一瞬のうちに脳裏に蘇って、思わず珠晶は手を振り上げた。
驚愕したのは取り巻いた一同、耳に痛そうな音を拾って、一様に身を縮める。
「──だったら、あたしが生まれたときに、どうして来ないの、大莫迦者っ!」
その麒麟は、呆気に取られたように珠晶を見上げた。
少女は幼い線の頬を紅潮させ、肩で息をしている。
ふと笑みが零れた。
そうして彼は、心から笑んで、深くその場に叩頭する。

 

⑦華胥の幽夢
(乗月)

「恵侯は、峯王を敬愛しておられたのですね」

 

「供王は祥瓊様に、陳謝には及ばず、と言ってくださったのだ」

 

彼女が自身の罪を背負って供王の前に行く勇気を持ち得るのだから、自分ばかりが臆病でいるわけにもいくまい。祥瓊のように自分もまた、この罪を背負って、新たなる峯王の前に進まねばならない。
では、月渓が祥瓊に詫びるべきことは、一つしかない。
「あなたの父上のものを盗む。どうか許していただきたい……」

 

(書簡)

背伸びしちゃうよね。アニメでもええ感じやったね。

鳥は語る。この世界で最初に得た友人の言葉を。──彼の声で。

「ですが……お友達でいらっしゃるのでしょう? お友達だからこそ、弱味は見せられないのかもしれませんけれど、もう少し正直におなりでもよろしいのでは」
そうだなあ、と陽子は天井を仰いだ。
「そうかもしれない。正直でないのは、確かかもな。正直に言うなら、官は相手にしてくれません、完全に爪弾きです、と言うべきなのかも。……でも、それはしたくないんだ。べつに弱味を見せたくないわけじゃないけどね。そりゃあ、あまり不甲斐ないとこや、情けないところは見てほしくないよ。嫌われたり軽蔑されたりはしたくないから。でも、楽俊は嫌ったり軽蔑したりする前に、ちゃんと助言や誤言をくれる人だし.…」
「心配をかけたくない?」
「それもあるかな。 ──うん、確かに心配はかけたくないと思ってるよ。でも、そういうのじゃないんだ。そうだな、きっと背伸びをしたいんだと思う

 

本当に順風満帆なはずなんてないって分かってるからこそ、それでも平気だって言って、しゃんと背筋を伸ばしている様子を見ていると、私もしゃんとしよう、元気を出して頑張ろうって気になる

 

(帰山)

奏国や世界設定の掘り下げ。

王朝の寿命は短い。奏の六百年、雁の五百年は破格だ。これに次ぐのは西の大国の範、氾王の治世は三百年に達しようとしているが、さらにそれに次ぐ王朝となると、九十年に達する恭になる。
不思議なことに、王朝の存続には、ある種の節目がある。ある――と、六百年にわたって王朝の興亡を見てきた利広は思っている。最初の節目は十年、これを越えると三十年から五十年は保つ。これが第二の節目で、ここに一つ、大きな山があるらしい。不思議なことに、これはその王の「死にごろ」にやってくる。

 

そして、どうあっても自身が生き残っているはずもないほどの時間が過ぎると、どうやら居直る。この山を越えると、王朝の寿命は格段に長くなる。次の山は三百年のあたり。なぜここに危険な節目が来るのか、利広には分からない。だが、ここで王朝が倒壊するときには、悲惨な倒れ方をすることが多い。それまで賢君として崇められてきた王が、いきなり暴君に豹変する。民は虐殺され、国土は荒れ果てる。

 

「そう――勢いがあるね、今度の慶は。いい感じだ」
利広は微笑む。慶の端々には、未だに強く王に対する不信感が残っている。だが、王都に近づけば近づくほど、民の顔は生彩を帯びてくる。王の膝許から希望が広がり始めている証拠だ。なにしろこれまで波乱を繰り返してきた国だから、臣下の硬直は岩のように堅固だが、それを吹き飛ばすだけの勢いを感じる。多分、慶は最初の十年を乗り越えるだろう。それもかなり良い形で。


⑧黄昏の岸 暁の天

陽子は頷き、病み衰えた女将軍の顔を見降ろす。
「こんな姿になってまで……」
国を救うために、満身創痍になりながらやってきた彼女。
──なんとかしてやりたい。
自分に何ができるかは、分からないけれども。
救ってやりたい。この将軍も、戴も──そして、泰麒も。

 

「所詮は他国のこと、なるようになれ、というわけだ?」
ぎょっとしたように息を呑む気配が室内に満ちた。主上、と諫めるような小声は景麒のもの、浩瀚や遠甫も驚いたように硬直している。尚隆は不快そうに眉を顰めた。
「景王には言葉が過ぎないか」
「けれども事実じゃないのですか? 静観していればそのうち胎果が生って、それで全部が振り出しに戻って雁は安泰でいられる、そういうことなんじゃあ?」

ひやひやさせんな(*'ω'*) 

 

「それは本当は、いまのことじゃなかったのだけど。もっと慶が落ち着いて、国に余裕ができて、それなりの国になったら、他国の荒民を救済するための方法を考えようって。国が荒れたから民は逃げ出す、逃げた先の国はやむを得ず抱え込む──そうではなく、もっと積極的に、荒れた国を支援し、民が国を逃げ出さなくても次の王が立つまでの間を凌ぐことができるような、そんな方策はないだろうか、と」

 

「そう。諸国に話が通った。恭と範、才、漣、奏の五国が協力してくれる。うちと慶をあわせて七国だ。芳と巧は空位だからそもそも数のうちには入れられないし、柳と舜からは色好い返答は貰えなかった」
陽子は軽く腰を浮かせた。
「五国……」
「とにかく、できる限りの手を使って、崑崙と蓬萊に捜索隊を出す。奏が誼の深い恭、才と協力して崑崙を引き受けてくれた。俺たちは範、漣と協力して蓬萊を受け持つ。範と漣からは台輔を雁に寄越してもらえるよう手筈が整っている。慶にしなかったのは、慶の国庫に負担をかけるのはどうかと思ったからなんだが、気を悪くするかな?」

ビッグプロジェクト始動。 

 

「……確かに、僕は本当に子供で、何一つ満足にはできなかった。何かをしようとすれば、かえって李斎たちに迷惑をかけた……あのときもそうだった」
「台輔、そんな」
「けれども李斎──僕はもう子供ではないです。いいえ、能力で言うなら、あのころのほうがずっといろいろなことができた。かえって無力になったのだと言えるんでしょう。けれども僕はもう、自分は無力だと嘆いて、無力であることに安住できるほど幼くない
「……台輔」
誰かが戴を救わねばなりません。戴の民がせずに、誰がそれをするのです?

 

「まず自分がしっかり立てないと、人を助けることもできないんだな、と思って」
陽子が言うと、そうでもないぜ、と六太は窓に額を寄せる。
「人を助けることで、自分が立てるってこともあるからさ」
「そんなもんか?」
「意外にな」
そうか、と呟いて見やった雲海には、すでに何者の影も見えなかった。

 

魔性の子

寄る辺を失った懐かしさが浮遊する。奇妙に頼りない気分になった。それは広瀬が滅入ったときに必ず感じる独特の気分によく似ている。──故国喪失者の感傷に。

 

「でも、僕はその間とこかにいて、そこはとても気持ちのいい場所だった気がするんです。思い出そうとすると必ずとても懐かしい感じがするから」
高里は淡く笑みを浮かべた。それは確かに微笑だった。
そこで僕は自分がとても幸せだった気がします。それで切ないくらい懐かしい気分になるんです」

 

朝礼のためにクラスへ行くと、教室の中はなんともお寒い状況だった。六人が死亡し、一人は意識不明。一昨日から朝礼までの間に事故に遭って欠席した者が十二人。病欠として届のあった者が四人。そして高里。教室にはわずか十六人の生徒が不安そうな面もちで坐っていた。

※猟奇殺人はまだまだ続くよ!

 

「いいか。誰もがここは自分の住処じゃねえと思ってる。誰でも一度は言うんだよ、帰りたいってな。帰る場所なんかねえんだ。それでも言うんだよ。この世界から逃げたいからだ」

 

ここから逃げればどこかに居心地のいい世界があるんだと思ってるんだ。手前のために用意された、手前のために都合のいい、絵に描いたような幸せが転がった世界があると思ってる。そんなものはないんだ。本当はどこにもねえんだよ、広瀬」

アニメ版ではそのポジションは杉本さんたちが受け持っていた。

 

「──俺は戻れない! なのに俺を置いて、お前だけが帰るのか!?︎」
彼は眼を閉じたままだった。濡れた髪を風が巻き上げて瞼に打ちつけていった。
「お前だけが帰るのか、高里!」
──分かります、と。
そう言ったのは高里だった。後藤は広瀬になら高里が理解できるはずだと言った。理解はできた。広瀬は高里の唯一の理解者だったろう。そして同時に、高里は広瀬の唯一の理解者だったのだ
「お前だけが故国に迎えられて」
同じように故国を失くして、この地上に桎梏で繋ぎ止められて。故国をただ語り偲ぶことしかできない異邦人のわずか一人の同胞。
「じゃあ、俺は? ここに一人で残される俺は?」
真実が露呈した。もはや真実を虚飾るどんな言葉も広瀬は持たない。
「どうしてお前だけなんだ!」
救いたいと思った。それは紛れもなく真実だった。平穏な未来を歩ませてやりたかった。そのためにできるだけのことをしてやりたかった。それはいまも変わらない。それでもその陰に、故国に迎えられる高里に対する醜いばかりの嫉妬がある
──人が人であることは、こんなにも汚い。

 
⑨白銀の墟 玄の月(一~四)

「残念ながら、いま現在、どこでどうしておられるのかは分からない。しかし身罷ってはおられない。それだけは断言できる

 

「項梁も、皆様も──御心配は重々分かります。私は、麒麟として持っていたはずの奇蹟の力を悉く失くしました。喪失したからこそ、奇蹟ではない現実的な何かで、戴を救うために貢献しなければなりません。皆様が苦難に耐えて今日までを乗り越えてこられたように、同じく苦難を乗り越えなければ、将来、平穏な戴を取り戻すことができたとしても、その平穏を皆様と一緒に享受する資格を失ってしまいます」
「台輔、しかし……」
「あなた方が平穏を喜んでいるときに、私はただ一人、自分の無力を呪わなければならない」

 

雌伏の期間が長いんだ。

函養山、銀川、付近の廃里──そして白琅。李斎らの捜索は悉く空振りに終わっている。手にしたのは戴のやるせない現実だけだった。荒廃が作った土匪の存在、土匪の占拠を許している現状、その土匪にも厳しい暮らしがあること。危険を承知で礫を拾う荒民たち、やっと得た宝を殺されて奪われた。奪ったほうも富を目当てに襲われるという戴の現実。逃げ込む場所すらなく廃里に隠れ、そこで飢えて死んだ者、そんな荒民を食
い物にして違法な商売で富を築く者。

旅で通り過ぎた街は、どこも荒廃が明らかだった。戦禍の痕跡、たむろする荒民たち、雪に覆われた閑地を埋める墓。不法がまかり通り、腐敗が民を損なっている。にもかかわらず、それらが正される様子はない。
──正当な王がいない。
それでも民の暮らしは苦しいながらも続いている。人は日々を生き、それぞれの暮らしを懸命に守っている。そこに暗い影が容赦なく忍び寄る。

 

「阿選が新しい王になる──台輔は、それを御存じだったのではないのですか? だから、あくまでも驍宗様に拘る皆様と袂を別たれた──」
李斎は絶句した。 

やっぱり泰麒さんミスリード誘いがちな。

 

麒麟という生き物は、もっと人の善なることを信じているのだと思っていた。当人にも善意しかなく、従って他者も善意をもって生きていると敷衍する。そんな、おめでたい生き物なのだろう、と。そうでなければ無尽蔵の哀れみなど湧いてこないだろう。

だが、戴の麒麟は違う。あの黒麒はそんなにおめでたくない。人を疑い、用心することを知っている。しかも極めて周到だ。ときには周囲を恫喝もする。驚くほど無慈悲な物言いをすることがあるが、おそらく計算ずくでやっているのだ、と耶利は見ていた。

暗黒の蓬莱生活が狡猾な黒麒を育てた。

 

ようやく一筋の光明が見えた気がした。現実はそう生易しいものではないだろう。そもそも李斎らが一軍相当の兵力を集めるだけでも遠大すぎて気が遠くなる。だからいまはまだ可能性がある、というだけの半ば夢物語のようなものだが、可能性があるのとないのとでは雲泥の差がある。蜘蛛の糸のように細い道筋だが、競宗が玉座を奪還するまでの道筋が初めてついた。確実に現在の李斎らから、未来の玉座へと繋がっている。
……天は戴を見捨てていない。

 

意志の力で殺傷ができるなら、この距離だって越えられる。
泰麒は頭を下げた。抵抗する力をねじ伏せて暗黒に頭蓋をめり込ませていく。痛みがあった。額から杭でもねじ込まれるようだった。後頭部にかけてが脈打つように痛み、拍動で内側から弾けそうだ。──だが、彼らの身体も同様にして破壊されたのだ
全身を叩き付けられた痛みはこの比ではあるまい。いまや泰麒は苦痛の満たされた器にすぎなかったが、それでも級友の足裏に踏み躙られた彼の痛みに匹敵するとは思えない。使令の顎に引き裂かれた人々。倒壊した山門、中庭に向かって崩壊した校舎、理不尽な死と恐怖、それを撒き散らしてきた自分に苦痛を言う資格などあるはずがない。
暗黒の底に辿り着いた。脈打つ痛みと耳鳴りの中で阿選が何かを呟いたのが聞こえた。
身動きできない泰麒の肩に誰かの手が掛けられ、上体を引き起こす。見上げると潤達の顔が赤く歪んでいた。
──台輔。
視野は赤く濁っている。

 

ここで引き返すことは許されない。
雪に覆われた山野、困窮して降る民、 ──そして。
おそらくはまだ雪のない遠く遥かな海辺の街。もう二度と帰ることもない泰麒の故郷。
そこで引き起こされた大量の死。それを無意味な犠牲にすることだけは、あってはならない。
ただ自分が戻った、そのためだけに引き起こされた巨大な惨禍。──その岸辺に残してきた。
「……い……」
それでもその岸を故郷と呼べるのは、たった一人、居てもいいと言ってくれた人がいたからだ。これからの彼が耐えねばならない苦難と悲嘆、生きるために凌がねばならない戦い、それを分かっていてなお、置き去りにしたのは、いま泰麒が踏んだ大地のどこにも彼の帰るべき場所はないと分かっていたから。
「……先生」

 

「ずいぶんとお強うなられた」
「もう子供ではないんですよ」と、泰麒はほのかに笑う。「たぶん、良くも悪くも強かになりました
「惜しくもあるが、心強い」

 

──あるいは、健気な少女が誰かを弔うために供物を添えたのか。後者かも
しれない。その玩具には遊びに馴染んだ手擦れがあった。
それを横から掠め取る自分に苦笑しながら、彼──驍宗は籠を軽く頭上に掲げた。一礼すると、それを手に歩き出した。
これのおかげで生き存えている、いままで

 

その供物は、正しく送り手から受け手へと辿り着いた。深い思いによって流されるささやかなそれが、まさしく王を支えている。
──送ったほうも、受け取ったほうも、それを知らない。

 

一般人の信仰生活の描写が大きな物語がつながった瞬間。

 

──碩杖を出たときには、わずかに三人だった。
李斎と去思、そして酆都。半年を経て、それが一軍の規模になった。
「兵力の全てが集まれば文州城を攻略できます」
静之が言って、李斎は頷いた。
──ここまで辿り着いた、ようやく。
あとは驍宗さえ見つかれば。

 

望んでいたのは泰麒による闘争だ。自力で張運らを排除し、驍宗を救い、
戴を救ってみせるがいい。一人でやり通してみせろ。できるものなら。

 

どこかの時点で、泰麒は治っていた。
それを今日まで隠していた。
「……やられたな」
琅燦は口許を歪めて笑った。
「つくづく、あの麒麟は化物だ」

 

決死隊潜伏がクライマックス!

阿選の燃え尽き症候群は結局よくわかんなかった…。

 

<メモ>

  • ファンタジー世界のリアリティ向上のためには、作品世界を緻密に丹念に構築するのが肝要。システム(世界の条理、天帝、天綱、麒麟が死ねば王も死ぬ・王が失道すれば麒麟が病む)政治体制、行政単位、法律や倫理、農工商業などの産業、軍備(国家間の戦争はルール上ないので対妖魔)や治水などの公共事業、婚姻や継承、寿命や生殖、信仰などの精神生活、騎獣や妖魔、差別/被差別や難民など…。あんまり現実世界と変わらないのね。
  • 語彙の選択が重厚でよい(FE風花みたいな)。陽子さんしかカタカナ使わないし。「胥徒(げかん)」などの著者一流の謎の当て字なんかも特徴的。他にも雁⇒延、載⇒泰など、国名と姓が同音異義なところとか。各巻ラストを歴史書風の塩漢文で締めるところとか。
  • それにしても王には過酷な運命が課せられているなあ。数百年健全メンタルを保つ難しさ…飽きそう。
  • ファンタジーで登場人物の心情や行動の本質部分に共鳴するところはあるのでは。いかに生くべきか、己に打ち克つにはどうすべきか、よい指導者とは、民の暮らしとは…など。
  • 硬派な作りだけど読者の興味を引き続ける構成なっているよ。政治しつつ冒険・バトルしつつ、情報集めやレジスタンスしつつ男女同権の英雄譚なのも珍しいのでは。
  • 海客率の偉人率高い。でも建物や服装は中華風だから山客さんたちもいっぱいいる?

 

○良きリーダーの要件まとめる

帝王学の教科書として活用してみよう!

  • 失敗を認める
  • 白黒はっきりつけすぎない
  • 適度に偉そうにする
  • 責任を果たす
  • 理想と現実の違いを知る
  • おのれを責て人をせむるな
  • 有為の人材を登用する
  • 気長に鷹揚に構える
  • 民の声を聴く(見る)
  • 部下の顔を覚える
  • 苦渋を見せない
  • 諫言を聞く
  • 法をゆがめない(信賞必罰)
  • 国を豊かにするよりもまず荒らさないこと