Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

デジタルネイチャー

デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

【概要】
著者(監督):落合陽一

侘び寂び、事事無碍、物化、AI、仮想通貨、メディアアートなど古今東西の様々な概念を坩堝で混合し、来るべきデジタルネイチャー的世界観を提示する。

つぎつぎに紙面に現れる奇抜な概念の数々に溺れそうになる。深浅や真偽はともかく、およそ自分では思いもよらなかった視点や着想が洪水のように渦巻いている。

ふつうの人が言っているなら机上の空論だったろうが、著者の場合はアート作品という形でのデジタルネイチャー的事物の実装が主張に現実味を持たせている。今後も著者の動向やデジタルネイチャー的事物にはアンテナを張っていたいところ。


【詳細】

高度に発達したコンピュータは、社会に遍在する段階(ユビキタス)を経て、自然と融合した新しい生態系として地球上を覆い尽くすことになるだろう。本書ではこのヴィジョンを<計数的な自然>または<計算機的な自然>あるいは<デジタルネイチャー>と呼ぶ。

 


<目次>

第1章:デジタルネイチャーとは何か――オーディオビジュアルの発明、量子化、デジタル計算機、そして計算機自然、デジタルネイチャーへ

第2章人間機械論、ユビキタス、東洋的なもの――計算機自然と社会

第3章:オープンソースの倫理と資本主義の精神――計算機自然と自然化する市場経済

第4章:コンピューテーショナル・ダイバーシティ――デジタルネイチャー下の市民社会像、言語から現象へ

第5章:未来価値のアービトラージと二極分化する社会――デジタルネイチャーは境界を消失させる

第6章:全体最適化された世界へ――〈人間〉の殻を脱ぎ捨てるために

終章:思考の立脚点としてのアート、そしてテクノロジー――未来を予測する最適の方法としての

 

<感想・引用>

近代の超克が近づいていること、東洋思想の復権、来るべき時代の世界観・価値観の変化、などに関し考察した後はメディアアートの紹介に移る。

わらしべ長者的働き方、ストレスマネジメント、ダイバーシティ化する障害、などは著者の既往の作品でも触れられている。厖大な訳注(西田幾多郎井筒俊彦デカルトソシュール...)はいうまでもない。

 

我々の言語は、いうなれば言語を用いる人間という<オートエンコーダー>が集団的に生成する、現象の次元圧縮装置と解釈できる。それが世界を記述するシステムとして不完全であることが、人類が突き当たっている<近代>の限界の根本にあるが、東洋文明には、その不完全性を超越しうる直感が常に底流している。

 

人間による人工物として発明されたコンピュータが、その内部に人間の解像度に十分な自然を再現することで、<人工>と<自然>の両方を、再帰的に飲み込みつつあるのだ。

 

近代に象徴される人間のと機械の対立構造を更新し、さらには、人間と機械のすべてを内包する万物の関係性(縁起)を記述することができる。そのとき記述される世界とは、新たな自然(デジタルネイチャー)である。

このとき最終的には、理事無碍における、「理」をもたらす理論(解析的な部分)による記述は、統計量を用いた機械学習によって、エンドポイントである「事」に包含され、「事」事無碍化する。