【概要】
著者(監督):鬼頭宏
江戸時代を一つの特異な文明システムとしてとらえる試み。宗門人別改帳からの人生復元、人口動態、自然環境の変化、産業の発展や経済活動など、さまざまな面から江戸時代を分析する。社会全体の生産性の向上とそれゆえの行き詰まりを眺めていると、近世から近代に移行する準備が着々と整っていたことがわかる。不連続に見える明治維新もよく見ると連続性があるようだ。
【詳細】
<目次>
- 第1章 日本文明史における近世
- 第2章 江戸時代の村に生きた人々
- 第3章 人口にみる江戸システム
- 第4章 人間を取り巻く環境
- 第5章 産業発展と生活革命
- 第6章 生活を支えた経済システム
- 第7章 生活としての徳川文明
- エピローグ 徳川文明の成熟
<メモ>
江戸時代の人々の暮らしの種々相を多角的に復元する。
労働集約的な農業、土地からのエネルギー回収の最適化、人口爆発と停滞などのテーマが取り上げられがちだが、農村と都会の人々のリアルな暮らしが復元されたのは面白かった。生老病死、産業、思想、環境など、いくらか江戸時代人のイメージの修正が必要かもしれない。
江戸システムを、発展段階説が考えるような必然的な歴史の発展段階としてみるべきではない。それは16世紀から17世紀にかけて存在した技術水準・産物・国際関係・政治思想・生活習慣・嗜好・自然環境のもとで選択され、創造された文明システムであった。(中略)
近代日本の土壌であり母体となった、しかしひとつの独立した文明が支配した時空として江戸時代を見直してみようと思う。
庶民は富を、武士は権力を、朝廷は権威を、それぞれ分担して受け持ったのが江戸時代であった。
経済化された農業社会、それが江戸システムの基本的な性格であった。
(江戸後半の停滞の時代は)成熟した文明とはどのようなものか、そこでは何が起きるのかをみせてくれるのである。壮大な社会実験であったといってもよい。物質とエネルギーの輸入が、とるに足りないほどの規模でしかなかった社会で人口はどのように変化したのか、生活はどうなったのか、家族や人間関係はどうなったか。
<参考>