
ぼくには数字が風景に見える [単行本]
著者:Daniel Tammet 訳:古屋美登里
評価:B
サヴァン症候群にしてアスペルガー症候群の著者が類まれな記憶力で綴る、克明なる半生記。
彼は、これら「障害」による苦労・苦悩や、それらを乗り越えての成長、そして自身がゲイであること…自分のすべてをあまさずカミングアウトする。その成長ぶりに思わず胸を熱くすると同時に、自分の不遜を思い知らされた。というのも、彼の行動・心理にはいわゆる"コミュ障"に通じるものが少なからずあり、自閉症 or not の線引きの難しさを知ったからだ。
サヴァンもアスペルガーも、どういった障害なのか寡聞にして知らなかったが、巻末の解説によると、「サヴァン症候群とは、非凡な才能と脳の発達障害をあわせ持つ人々のこと」で、「一方、アスペルガー症候群は、自閉症のごく近縁にある障害」を持つ人々のこと。また、自閉症とアスペルガー症候群(およびその近縁に位置する障害の総称として広汎性発達障害とも)の「両者に共通する中核的な症状は、せんじつめると次のふたつである。①人の心の動きがよくわからないので、対人関係が上手にとれない。②ひとつのことに強くこだわり、新しいことがらや環境をなかなか受け入れられない。」
手記を出版するまでになった著者の成長の陰には、もちろん彼自身の努力があった。そして、それに勝るとも劣らぬ、両親をはじめとする周囲のひとびとの支えがあった。彼は持って生まれた「障害」を「恩恵」に変えてみせてくれたのだ。