【概要】
著者(監督):鳥飼玖美子
同時通訳者のパイオニアたちのオーラルヒストリーを集め、通訳者を目指したきっかけや研鑽の日々、キューバ危機、ケネディ暗殺、ビートルズ、アポロ宇宙中継、大阪万博、沖縄返還といった戦後現代史を振り返る。著者自身の経歴もなかなかイカしている。古き良きアメリカに留学し、通訳者として外交や歴史的イベントの最前線で活躍しつつ、一旦家庭を経て、自分の歌を歌いたくなった彼女。61歳で英国サウサンプトでPh.D を取得し、英語教育の指導者に転身。
ラジオ英会話(カムカム英語など)や在日米軍への体当たりコミュニケーションくらいしか学ぶ手段がない時代の苦闘がしのばれるが、「動機付けが自律した学習者を育てる」という点は各人共通しており、意思を通じた原体験が内発的動機として有効であることがたびたび出てくる。
それで、そのときの……何ていうか……うれしかったというのかなぁ、欣喜雀躍というのかな、もう天にも昇るような感じでね、「通じたッ。通じたッ。通じた。通じたッ」と言いながら、叫び声を上げながらね、山の僕の家は神戸の山の麓みたいなところにあったので、そこまで駆けていってね、「通じたッ。通じたッ。通じたッ。通じたッ」といって。
この原体験が、その後の國弘の運命を決めることになる。
他にも、以下のような意見は参考になる。
- 「本人にその意欲さえあれば英語は使えるようになる、という信念である」
- 「失敗を気にしない楽天性という通訳者に必須の資質」
- 「多様な英語ニュースを見て、短時間で大意を把握し、日本語にするという作業」が有効だった。
【詳細】
<目次>
- プロローグ
- 第1章 英語との出会い
- 第2章 一九六〇年代とアメリカ
- 第3章 アポロ宇宙中継と大阪万博、そして沖縄返還
- 第4章 偶然の積み重ね――通訳から大学英語教育という世界へ
- 第5章 「通訳者」という存在
- 第6章 教育そして教師というもの
- 第7章 生涯学習を実践する
- 第8章 メディア英語講座と私
- 第9章 言葉へのこだわり
- 第10章 思い込みからの脱却
- エピローグ
- あとがき
- 文庫版あとがき
- 解説 阿部公彦
<メモ>