【概要】
著者(監督):伊丹十三
マルチタレントのじゅうそぞうのヨーロッパ旅エッセイ。映画や食、ファッションや国民性、英語指南など多方面にわたり、たしかな美的センスでもって語る。気だるげでいて細かな観察眼が光る。だんだん面白くなってくる。装画も自分で手掛けるなど、著者の多芸ぶりをあらわしている。
・ロンドン:秋の夜は、始まった時から更けている。
・パリ:連中は、街を、上等の外套みたいに着こんでいるんだ。
・イタリー:イタリーを思うことは、たとえば,遠く過ぎ去った夏を思うに似ている。
のような感じで、解説の通り、「キザだな、とは思ったが、イヤ味は感じなかった」。
英国式お茶の入れ方、スパゲッティーの巻き方指南、酒をあえて飲み干さず残しておくなどレストランでのエチケットなどもひょっこりはんする。かといって欧州への無条件の礼賛ではなく、宗主国ムーヴや国際語となった英語へのピリつきを滲ませたりもしている。
カッコよさを大事にしている著者は、日本の貧乏くささ・町の雑然さ(丸に犬と書いた金属板など)・紋切り型の言葉(恐れ入谷の鬼子母神など)が嫌いみたいだ。映画における説明的な台詞の愚劣さは現代でも通用する。
【詳細】
<目次>
略。
<メモ>
男のお洒落というのは、本筋、でなければならぬ。スタンダードでなくてはならぬ。場違いであってはならぬ、のです。
勇気を奮い起さねばならぬのは、この時である。人生から降りてはいけないのだ。なるほど言葉が不自由であるかも知れぬ。孤独であるかも知れぬ。しかし、それを仮の生活といい逃れてしまってはいけない。
人生において、優れたものに対する「怖れ」を持たない人、こういう人は何をやらせても駄目なのだ、とわたくしは思う。
たしかに(; ・`д・´)