【概要】
著者(監督):小山堅
石油・石炭・天然ガスの化石燃料三兄弟に加え、再生可能エネ・原子力・クリティカルミネラル、アンモニア・水素を加えた7品目について、埋蔵量・生産量、輸出入の流れを図解する。太平洋戦争、オイルショック、ウクライナ戦争などの事例でも明らかなように、こういった資源は供給コントロールにより戦略物資たり得るもので、交渉材料にできる。まあわかっていたけど、アメリカ(シェール革命後)と中国・ロシアが強すぎる。中東勢の中にはあぐらをかかずにクリーンエネルギーに転換しようと頑張っているところもあるみたいだ。
化石燃料的には圧倒的ビハインドの欧州と日本ではあるが、欧州は再エネとルールメイキングに自信あり。ほぼ何もない日本はアンモニア・水素など、(消費過程では)カーボンフリーの技術開発と実装、ルールメイキング・国家間の調整役(安定供給)に独自の立ち位置を構築せよと説く。
【詳細】
<目次>
- 第1章 激動の時代のなかで世界が戦略物資に向ける眼差し(産業革命以来資源に依存する私たち;国際政治シーンで重要な役割を持つ戦略物資とは? ほか)
- 第2章 資源を豊富に持つのはどの国なのか 戦略物資の最新地図(資源は世界中に張り巡らされるサプライチェーンで供給される;各国の経済活動に最も欠かせない石油の最新地図 ほか)
- 第3章 国家の命運を左右する世界の分断と戦略物資(米中対立によって変わった世界の地政学リスク;利益重視から安全重視へ 世界の分断は何をもたらすのか? ほか)
- 第4章 政治化する気候変動問題 脱炭素化から見た戦略物資(世界が注目する脱炭素 実現に向けた「不都合な真実」とは?;脱炭素化がもたらす戦略物資の未来地図 ほか)
- 第5章 日本の戦略物資とその未来地図(資源が豊富な国とは異なる日本にとっての戦略物資とは?;日本から見た戦略物資の地政学 いかにしてエネルギーの安定した供給を守るのか ほか)
<メモ>
- シェール革命によりレアメタル以外はつよつよになったアメリカ、中国や第三国に接近するロシア、そのロシアの窮状を冷静に分析する中国、再エネに自信のあった欧州の石炭逆行・自動車全EV化先送り、脱炭素に協力させられる新興国など、各プレイヤーがご都合主義で動き回っている。これが地政学。
- 著者曰く、石化燃料の完全代替は不可能。ただし数十年かけて徐々に減少トレンドになるだろうとのこと。
- なんだか技術士の勉強していたころを思い出したわ。各化石燃料の排出CO2比率、CCS/CCUS、天然ガスなどの長期契約とスポット購入の違い、LNGや原子力プラントには巨額の投資(数千億~兆円オーダー)がかかること、小型モジュール炉SMRの技術開発などなど。エネルギー市場の合理化そして脆弱化、サプライチェーン供給先分散による調達コスト増加、再生エネの変動を吸収するためのベースロード電源も含めた統合コストで各発電方法を評価することなど、お花畑にならないための知識を授けてくれる。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2022.pdf