【概要】
著者(監督):神坂次郎
幼少のきょうだいや老父母へのいたわり、戦友との友情、ほのかな恋慕、新婚夫婦の短い逢瀬などなど、十死零生の作戦に赴かざるをえなかった彼らの人間らしい息吹を感じ取れる。世が世ならよき夫、よき社会の構成員となりえた彼らの残酷な人生に暗澹たる気持ちになるのである。操縦席を埋めた花とマスコット、胸ポケットの写真、あえてほがらかに最期のときを過ごす青年兵たちの光景に美と勇を感じるのである。
サブタイトル通り、特攻隊員やその家族、特攻おばさん、女学生たちの手記や書簡の引用がメインで、著者の地の文は控えめだが、それだけに時折現れる地の文には静かながらも激しい憤りが感じられる。
いま、四十年という歴史の歳月を濾して太平洋戦争を振り返ってみれば、そこには美があり醜があり、勇があり怯があった。祖国の急を救うため死に赴いた至純の若者や少年たちと、その特攻の若者たちを石つぶての如く修羅に投げこみ、戦況不利とみるや戦線を放棄し遁走した四航軍の首脳や、六航軍の将軍や参謀たちが、戦後ながく亡霊のごとく生きて老醜をさらしている姿と……。
特攻は戦術ではない。指揮官の無能、堕落を示す"統率の外道"である。
とりあえず知覧特攻平和会館行こうか。個人的にはロビーの「知覧鎮魂の賦」がえかったのお。
【詳細】
<目次>
- 特攻基地、知覧ふたたび――序にかえて
- 第一話 心充たれてわが恋かなし
- 第二話 取違にて
- 第三話 海の自鳴琴オルゴール
- 第四話 第百三振武隊出撃せよ
- 第五話 サルミまで……
- 第六話 あのひとたち
- 第七話 祐夫の桜 輝夫の桜
- 第八話 海紅豆咲くころ
- 第九話 母上さま日記を書きます
- 第十話 雲ながれゆく
- 第十一話 父に逢いたくば蒼天をみよ
- 第十二話 約束
- 第十三話 二十・五・十一 九州・雨 沖縄・晴のち曇
- 第十四話 背中の静ちゃん
- 第十五話 素裸の攻撃隊
- 第十六話 惜別の唄
- 第十七話 ごんちゃん
- 第十八話 “特攻”案内人
- 第十九話 魂火飛ぶ夜に
- 特攻誄――あとがきにかえて
- 解説 高田宏
<メモ>
穴沢氏と智恵子
「会ひたい……話したい……無性に……」
上原良司
「世界何処に於ても肩で風を切つて歩く日本人、これが私の夢見た理想でした」
松元ヒミ子
「三十八年たったいまも、その時の土ほこりのように心の裡にこびりついているのは、朗らかで歌の上手な十九歳の少年航空兵出の人が、出撃の前の日の夕がた「お母さん、お母さん」と薄ぐらい竹林のなかで、日本刀を振りまわしていた姿です。ーー立派でした。あンひとたちは……」
江波正人
町に出て写真を撮る。追いすがつてくる"死"の時間を、ここで一時停めてやる。
渋谷健一
父恋しと思はば空を視よ。大空に浮ぶ白雲に乗りて父は常に微笑て迎ふ。
美喜子&中田茂
中田さんより手紙頂く。汽車の中でポロポロ涙が出た、 涙なんかないものと思って
たらやっぱりある様でしたと心の奥まで書いてある。さうだよね、いくら御国の御為
と心にきめていたつて別れは別れ、悲しい、人間ですものね
発車後一筋ポロポロ、手紙を開いてからポロポロ、涙など何処かへ忘れたと思つて
居りましたら矢張りある様でした。せきますままに乱筆乱文お許し下さい。何れ車中
にてゆつくりお便り致します>