Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

人生タクシー


著者(監督):ジャファル・パナヒ

【概要】
イランの日常をドラマに変える。人々のたくましさと人生の悲喜劇を乗せ、今日も街をゆくタクシーにいざ乗り込もう。私にはとても面白く感じられた。

【詳細】
<あらすじ>
イラン映画(映画?)。
タクシーのフロントガラス正面からの映像に、オリエンタルな音楽が乗る。
当然のごとく相乗りするシステムで後部座席はガヤガヤしてくる。
いきなりカメラは後ろに回り乗客を映す。
乗客の口論が始まる。
①強盗と②教師との死刑是非問答。お互い譲らない。
そのさなか、さっそく身分がバレる映画監督。

乗客はどんどん入れ替わり、③ビデオ店店員が乗車。
すると突然乗り込んでくる、④バイクで事故った兄ちゃんとその妻。
気が遠くなる中遺言をスマホビデオに残す夫、錯乱する妻の様子はホントにやらせなしであることを実感させる。
(こんだけ交通マナーがフリーダムだったら、事故も日常茶飯事だろうな)

夫婦を病院で下ろし、肥ったビデオ店員の家へ向かうと、後部座席でDVD販売が始まった。
⑤芸大生にも身バレし、撮りたいテーマを見つけるワザを問われると、題材はもがきながら自分で探すことを芸大生に諭す。人の善さそうな顔が魅力的。

彼らと別れると、⑥金魚鉢を持った老姉妹が乗車。
正午までに泉に行って金魚を返さないと死ぬらしい。不思議な信仰だ。
おーーっとここで監督、慣れてないからブレーキ下手、鉢割っちゃう。
道知らないのと姪の送迎を理由に他のタクシーに二人を移送。
一難去ってまた一難。ぶっちゃけありえない(MaxHeart)。
監督のやれやれ感あふれる顔がいい。

口実かと思ったらホントに⑦姪をピックアップ。
無言だった姪、めっちゃ喋りはじめる。アリスのようにおしゃべりなおませさん。
姪はCanonのビデオカメラを取り出して撮り出した。学校の課題らしい。
視点が切り替わったと思ったら「あはっ」の姪の声。お前さんが撮ってたんかーい。
フラッペをエサに姪を一時退場させ、CDを買い、⑧幼馴染とハードボイルドな会話を始める。
強盗を訴えなかった話(ここで冒頭の死刑の話がつながる)、人も街も変わったという話。

姪と幼馴染が入れ替わり運転再開。
ここで姪の講義がリスタート。今のイランでOKな映画は? 俗悪なリアリズムとは?
新郎新婦とゴミ拾いの少年の50トマン返せない事件(もどかしい)を挟み
⑨弁護士活動家が登場。やっぱり見た目や話し方と職業は相関している…。
彼女が下りた後は、姪への社会科講義で反撃。おじさん確かに好かれそう。
観光地らしきところで降りると、車上荒らしの二人がバラが添えられたフロントガラスに迫る。そんな衝撃のラストで終了。


<印象>
10陣営くらいのドラマが繰り広げられる。
老若男女の人間模様にして悲喜劇。
一人ひとりに人生があり、日常にドラマは転がっていることを実感する。
タダタクシーは街をゆく。
映画監督だけあって人脈がハイソ。
西と東の混ざった西寄りの顔が多く、商魂たくましい人々が次々現れる。
街の雰囲気や話す内容、イスラム法や老姉妹の信仰とハイテク機器の混淆するから、イランの今を感じ取れ。

・イランの人々
やっぱりイランはペルシャの昔から知的な感じがする。
会話の端々ににじむユーモアと知性、語尾が伸びる現代ペルシャ語がいいね。
先生といい姪といい女がよくしゃべる。まあどこの世界もそんなもんか。
否定が「ないないないん!」と日本語やドイツ語っぽいのが面白い。

・カメラ
いろんなカメラ(車載カメラ、店員のスマホ、姪のキャノン)が切り替わるのが面白い。
撮られてる側も撮られてるという寓意もある…?

Bi-ism Allah…やユア・アリー、アッラーのほかに神はなし、などイスラム法らしきものが顔をのぞかせる。
現代人が宗教とどう折り合いをつけているのか気になる。