【概要】
著者(監督):大川周明
いま日本はまさしく興亡の岐路に立っている。この非常の難局に善処し、君国を富嶽の安きに置き、進んで荘厳なる理想の実現を期するためには、必ずや日本歴史を学んで、日本及び日本人の真実の姿を見究めねばならぬ。
歴史の変革期(いつも)に☝ありがち。
東條のシャイニングヘッドスパーン動画でおなじみ大川周明の日本通史。いかにも右寄り国粋主義的な感じであるが、思ったよりは普通。昭和十四年初夏出版だけあって国粋的な意味づけや天皇サイドを是とするなどの誘導がみられる(万世一系の皇統アピールや神道・朝廷側マンセーなど)。そこまで過度に朝敵をdisったりすることはないがシナには厳しめ。満州事変、日中戦争など激動の時代の書であるため、「東亜新秩序の確立」に期待しすぎている感も。
日本精神の数ある特徴のうち、その最も著しきものは、入り来る総ての思想・文明に「方向を与える」ことである。
とあるように、大陸の先進文明、仏教および周辺技術、近代文明・科学技術の摂取に努めたのは皆知る通り。キャッチアップは得意技。
また日本列島の「美しく烈しく鋭い自然」が「敢為の気象と強い熱情」を養ったとのこと(どちらかというと『風土』のように受容の気象という方が近いような)。なお敢為の気象は消失しつつあるが…。
【詳細】
<目次>
- 日本民族及び日本国家
- 日本国家の建設
- 儒教及びシナ文明の伝来
- 大化改新
- 仏教は如何にして日本に栄えしか
- 奈良朝の文化
- 平安遷都
- 貴族政治の堕落と武士勢力の台頭
- 源氏と平氏
- 鎌倉幕府の政治
- 宗教改革者としての道元禅師
- 蒙古襲来前後
- 建部中興
- 室町時代
- 戦国時代の文明史的意義
- 新時代の開拓者織田信長
- 海外発展精神の勃興とその挫折
- 基督教の伝来
- 切支丹禁制
- 徳川時代の社会及び国家
- 徳川初期の文化
- 徳川時代の思想界に於ける新精神
- 徳川時代に於ける泰西文明の摂取
- 幕末日本の国難
- 尊皇と攘夷と倒幕
- 明治維新
- 世界維新に直面する日本
<メモ>
東條も苦笑い(; ・`д・´)
〇読み解くポイント
- 東洋史は南北二大勢力の抗争・勝敗の歴史。
- 人民や財産の公有化と私有化、集権化と分権化、宗教・学問の民衆化(仏教・儒教[学]・国学・洋学)、戦闘の集団化などの大きな流れ。
- 溌溂とした緊張ののちには懶惰な弛緩が訪れるので、それが打破されるときに歴史が大きく動く。
- 建国、大化改新、鎌倉幕府創立、徳川幕府大政奉還、現代(1930's)が大きな転換点だったらしい。
- 近代前期は明治政府、自由党、改進党の三つ巴。
ジャポンはたまにシルクロードの終着点と言われたりするが、東洋文明も西洋文明も本当に真髄を摂取できたのか?
しかるに吾らは、アジア大陸に咲き香える文化の花の輸入せらるる毎に、まさに新たなる感激に胸を躍らせて来た。 最初三韓文明と接したる時も、次にシナの儒教文明に接したる時も、後にインドの仏教文明と接したる時も、吾らは他国民の追蹤を許さぬ敏感と、驚嘆すべき自由なる批判的精神とを以て、仔細に之を観察し、熱心に之を研究した。而してこの厳格なる努力は、それらの文明を遺憾なく領会して、之を国民的生命の内容として摂取し了るまで続けられた。盲目なる崇拝は、吾らの断じてせぬところである。同時に偏狭なる排斥も、また吾らの決して敢てせぬところである。