【概要】
著者(監督):赤坂真理
本書の白眉は「天皇の戦争責任」についてのディべートなのだが、そこまでが遠いんだ これが。300頁ぐらい掘り進まないといけないから。
一見面白そうなのだが、全体的に読みづらい。鹿狩りとレイプ未遂事件とか、少女期の二ケツ環七とか、母の東京裁判の通訳の話とか、過去の自分との通信とか、ベトナム戦争とか、森の王とか、選ばれし者とか、大君や英霊の聲の口寄せとか、精神世界の描写には独自の感性が見えるところはあるのだが、イメージが断片的で統合されている印象がない。カオスをカオスのままにしている感じで、いまいち残尿感がある。イタコの神がかり的な内面描写をひたすら見せつけられている感じだ。
帝国憲法の「輔弼」「大元帥」などの曖昧な用語、戦争犯罪のクラス分け、憲法9条の「これ」いじり、日本の中空思想、英語あるある、アメリカ感の描写(「アメリカでは、車は天国であり地獄である」「体感と華氏の目盛りを重ねられることは、おそらく一生ない」)、軍事裁判の欺瞞の指摘、「過ちは繰り返しません」、ポ宣言受諾の言い回し「朕ハ帝国政府ヲシテ…」など、ときおり面白いところもある。
【詳細】
<メモ>
それは私になる。
あなたは、私になる。
声がくる。
―—善きかな。
「能だ歌舞伎だとそんな石器時代のことを言ってなんになる。現代アメリカ人にとって、最も興味のあることはひとつだ」
「と言いますと」
「真珠湾攻撃から天皇の降伏まで」
「天皇の降伏!!(エンペラーズ・サレンダー)」
とても驚いて、今なんどおっしゃいました?(アイ・ベグ・ユア・パードン) みたいに突子もない声で私は訊いた。
これは何?
もしかして宇宙。
何を視る?
もしかして、
神。