【概要】
著者(監督):斎藤茂吉 編:山口茂吉・柴生田稔・佐藤佐太郎
近代の代表的歌人・茂吉の和歌を集めた。子規をリスペクトしているあたりからして、素直で写実的なものが多い印象。と思いきや性欲シリーズが謎に充実しており、自身の内面を見つめながら詠んだことがハッキリわかるぞなもし。母シリーズに「みちのくの」が入っていないのが若干気になる。最上川大好きマン。そして編者にも茂吉がおる。
【詳細】
<メモ>
- 潮沫のはかなくあらばもろ共にいづべの方にほろびてゆかむ
- 木のもとに梅はめば酸しをさな妻ひとにさにづらう時たちにけり ☜をさな妻護り隊、緊急出動!!!(; ・`д・´)
- よるさむく火を警むるひやうしぎの聞え来る頃はひもじかりけり
- くろく散る通草の花のかなしさを稚くてこそおもひそめしか
- 山ふかき落葉のなかに光り居る寂しきみづをわれは見にけり
- 何ぞもとのぞき見しかば弟妹らは亀に酒をば飲ませてゐたり ☜動物虐待( ˘ω˘ )
- 秋のかぜ吹きてゐたれば遠かたの薄のなかに曼殊沙華赤し
- 白雲は湧きたつらむか我ひとり行かむと思ふ山のはざまに
- ゆふ日とほく金にひかれば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり ☜どういうゲームなんだに( ˘ω˘ )
- ゴオガンの自画像みればみちのくに山蚕殺ししその日おもほゆ ☜どう繋がったんだ(; ・`д・´)
- ほのぼのと目を細くして抱かれし子は去りしより幾夜か経たる ☜(;ε;)
- あはれなる女の瞼恋ひ撫でてその夜ほとほとわれは死にけり ☜官能性( ˘ω˘ )
- この心葬り果てんと秀の光る錐を畳に刺しにけるかも
- (みちのくの母のいのちを一目見ん一目見んとぞただにいそげる) ☜なぜ収録されていないのか!!!( ˘ω˘ )
- 死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる ☜かはづ結構頻出(;ε;)
- 灰の中に母をひろへり朝日子ののぼるがなかに母をひろへり ☜くりかへしが有効打(;ε;)
- かがやけるひとすぢの道遙けくてかうかうと風は吹きゆきにけり
- しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼はまたたきにけり ☜牛馬シリーズ( ˘ω˘ )
- 電車とまるここは青山三丁目染谷の紺に雪ふり消居り
- 入日には金のまさごの揺られくる小磯の波に足をぬらす
- いのちをはりて眼をとぢし祖母の足にかすかなる皸のさびしさ
- 稚くてありし日のごと吊柿に陽はあはあはと差しゐたるかも ☜幼少期への憧憬( ˘ω˘ )
- 街かげの原にこほれる夜の雪ふみゆく我の咳ひびきけり
- まながひに立ちくる君がおもかげのたまゆらにして消ゆる寂しさ
- ひさびさに外にいづれば泥こほり蹄のあとも心ひきたり
- をさなごは畳のうへに立ちて居りこの穉児は立ちそめにけり ☜幼児シリーズ多い( ˘ω˘ )
- しづかなる午後の日ざかりを行くきし牛坂のなかばを今しあゆめる
- あはれあはれここは肥前の長崎か唐寺の甍にふる寒き雨 ☜旅行シリーズ開始( ˘ω˘ )
- 南蛮絵の渡来も花粉の飛びてくる趣なしていつしかにあり
- 湯いづる山の月の光は隈なくて枕べにおきししろがねの時計を照らす
- かかる墓もあはれなりけり「ドミニカ柿本スギ之墓行年九歳」
- ゆふぐれの日に照らされし早稲の香をなつかしみつつくだる山路
- リンデンの黄に色づきし木のもとに落葉がたまる日に照らされて
- しづかなる心の興奮をさながらにねむりにつかむときの楽しさ ☜遠足前夜感( ˘ω˘ )
- 奴隷らも豪富のひともかぎりなく生を惜しみて此処につどひき ☜圧倒的ポンペイ感(; ・`д・´)
- 一隊がHakenkreuzの赤旗を立ててゆきぬこの川上に ☜時事ネタ挿入さる(; ・`д・´)
- 牛の頸にさげたる鈴が日もすがら鳴りゐるアルプの青原に来も
- 赤き日が大きくなりて入るころに荷馬車の音ぞ澄みてきこゆる
- とどろきてすさまじき火をものがたる穉児のかうべわれは撫でたり ☜病院全焼シリーズ(;ε;)
- 焼けあとにわれは立ちたり日は暮れていのりも絶えし空しさのはて
- かへりこし家にあかつきのちやぶ台に火燄の香する沢庵を食む
- 右中山道みちひだりながはま越前みちとふ石じるしあはれ
- Mu¨nchenにわが居りしとき夜ふけて陰の白毛を切りて捨てにき ☜(;ε;)
- 紀伊のくに大雲取の峰ごえに一足ごとにわが汗はおつ
- いそぎ行く馬の背なかの氷よりしづくは落ちぬ夏の山路に
- たまきはる命をはりし後世に砂に生れて我は居るべし
- ゆふぐれし机のまへにひとり居りて鰻を食ふは楽しかりけり ☜ちょっとした楽しみシリーズ
- こぞの年あたりよりわが性欲は淡くなりつつ無くなるらしも ☜衰えゆく性欲シリーズ(; ・`д・´)
- むらがれるものの寂しさとおもはむか一谷に鳴くひぐらしのこゑ
- 寺なかにあかくともりし臘の火の臘つきてゆくごとくしづけし
- 春になれば日本人墓地のほとりにも雲雀が群れて啼きのぼるとふ
- 一つだに山の見えざる地のはてに日の入りゆくはあはれなりけり
- 旅人は時に感傷の心あり犬ひとつゐて畑を歩く
- 畑中に人を葬るさまが見ゆ馬ひとつ其処に佇み居りて
- あたらしき年のはじめは楽しかりわがたましひを養ひゆかむ
- 試験にて苦しむさまをありありと年老いて夢に見るはかなしも ☜あるあるシリーズ(;ε;)
- とことはにくがねかがよふみ仏の御足のもとによみがへるもの ☜常/永久に/金/輝う…
- あかつきの光やうやく見ゆるころすゑたる甕のなかに糞を垂る ☜脱糞尻ーズ(;ε;)
- つかれつつ佐久に著きたり小料理店運送店蹄鉄鍛治馬橇工場等々 ☜ラップシリーズ(; ・`д・´)
- この谿にわきかへりくる白浪を見つつ飽かねどわれは去りゆく
- 美濃のくに谷汲やまの山のまにひぐらし鳴けばしづけくもあるか
- はやはやも戸を閉ざしたる釈迦堂に雨はれしかば暮れのこる空
- あやしみて人はおもふな年老いしショオペンハウエル笛吹きしかど
- よひ闇より負けてかへれるわが猫は机のしたに入りてゆきたり
- おほどかにわれにあれよと人いへばきのふとけふも怒ることなし
- まどかにも照りくるものか歩みとどめて吾の見てゐる冬の世の月
- いきどほり遣らはむとする方しらず白くなりたる鼻毛おのれ抜く
- 号外は「死刑」報ぜりしかれども行くもろつびとただにひそけし
- 青葉くらきその下かげのあはれさは「女囚携帯乳児墓」
- 虫のこゑいたりわたれる野のうへに吾も来てをり天のなかの月
- ひさかたの乳いろなせる大き輪の中にかがやく秋のよの月
- 鼠の巣片づけながらいふこゑは「ああそれなのにそれなのにねえ」
- たのまれし必要ありて今日一日性欲の書読む遠き世界の如く ☜上の句の言い訳がすごい(; ・`д・´)
- 罪ふかきもののごとくに昼ながら浅草寺のにはとりの声 ☜ユーモアセンス
- この夜ごろかぎりなき星かがやきて寒田のうへに雨降らなくに
- 過ぎらむとするのか否か不明にて歩道に来たる黒猫ひとつ
- 朝はやくより穉き子を疑ひたりなどして冬日みじかし
- 青羊歯のひいで秀でし形態に「平衡グライヒゲウイヒト」のさま見えむとす ☜理系やん(; ・`д・´)
- 慌しく階下におりて来りしが何のために下りて来しか分からず ☜老後シリーズ(;ε;)
- 白き餅われは呑みこむ愛染も私ならずと今しおもはむ
- わたつみに向ひてゐたる乳牛が前脚折りてひざまづく見ゆ
- あまのはら冷ゆらむときにおのづから柘榴は割れてそのくれなゐよ
- 灰燼の中よりわれもフエニキスとなりて飛ばむ小さけれども
- たたかひの終末ちかくこの村に鳴りひびきたる鐘を忘れず
- われひとり歩きてくれば雪しろきデルタのうへに月照りにけり
- ながらへてあれば涙のいづるまで最上の川の春ををしまむ
- 最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片
- さびしくも雪ふるまへの山に鳴く蛙に射すや入日のひかり
- この春に生れいでたるわが孫よはしけやしはしけやし未だ見ねども
- 最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも
- 短距離の汽車に乗れれど吾よりも老いたる人は稀になりたり
- 聞ける者は聞けり聞かぬ者は聞かずけりワーテルロオのその轟きをも
- 夢の世界中間にしてわが生はきのふも今日もその果なさよ
- みづからも落度などとはおもふなよわが細胞は刻々死するを
- さしあたり吾にむかひて伝ふるな性欲に似し情の甘美を
- 生活を単純化して生きむとす単純化とは即ち臥床なり
- わが生はかくのごとけむおのがため納豆買ひて帰るゆふぐれ
- 目のまへの売犬の小さきものどもよ生長ののちは賢くなれよ
- この現世清くしなれとをろがむにあらざりけりあヽ菩薩よ
- 永世楽土、永遠童貞女、永遠回帰、而して永世中立、エトセトラ ☜謎(; ・`д・´)
- 円柱の下ゆく僧侶まだ若くこれより先きいろいろの事があるらむ ☜人生の先輩より(;ε;)
- 衰へしわが身親切をかうむりぬ親切はひかりの満ちくるごとく
- 暁の薄明に死をおもふことあり除外例なき死といへるもの
- 川原ぐみくれなゐの色あざやかになりてゆく時いのち長しも
- わが家の猫が庭たづみを飲みに来て楽しきが如しくれなゐのした
- わが色欲微かに残るころ渋谷の駅にさしかかりけり ☜おのれの性欲と向き合いすぎ(; ・`д・´)
- いつしかも日がしづみゆきうつせみのわれもおのづからきはまるらしも