【概要】
著者(監督):小松茂美
本邦文学史を支えたかな文字の成立と変遷をたどる。文献からの古文引用や用例が多数あり非常に学術的でしっかり考証されている感はあるのだが、いささか細かすぎて眠くなる。著者、書の研究が専門らしい。
【詳細】
<目次>
- はしがき
- I 発生
- II 展開--かなのいろいろ
- III 定着--書としてのかな
- むすび
- あとがき
- 片かな字体一覧、平がな字体一覧
<メモ>
当初は文字とすら認識されていなかった漢字をカスタマイズし、おのれの言葉を記す道具を手に入れた日本人。偉大なる中継ぎ・万葉仮名はもちろんのこと、装飾的な葦手や「なにはづに」の歌も登場し、豊饒な仮名の世界の拡がりを感じられる。母音の多さや五十音図の成立時期も気になるところ。
言語的性格の著しく喰い違った、いわば、相性のよくない相手を受け入れざるをえなかった当時の日本人に、それなりの生活の知恵が生まれたことは自然のなりゆきであった。このような、漢字と漢文の不自由さを克服して、日本語の特性を生かす工夫に砕身したことは疑いない。やさしく、しかも早くというのが、かれらの文字生活の願望であったに違いない。また、感情のすみずみまでを細やかに、しかも豊かに表現できる文字と文章とを獲得したいという欲望を抱いたことも当然のことであろう。その果てしない欲望は古代日本人たちの日常生活に広まり、やがて着々と具体化の一途をたどりはじめた。だが、それにはわれわれの予想もおよばぬほどの多くの歳月が必要であった。