Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

漢字 生い立ちとその背景

漢字: 生い立ちとその背景 (岩波新書)

【概要】
著者(監督):白川静

甲骨文字に由来する漢字は、古代中国人の「生活の記念碑」。我々の想像以上に、漢字には中国上古の時代の呪術的な思想が象形化されているのだ。

家畜や異民族の犠牲、媚女や蟲毒とかがまさにそれ。万葉集の引用もちょくちょくされており、日本の上古の時代にも同様の思想があったことが窺えて興味深い。

 

【詳細】
<目次>

  • 一 象形文字の論理
  • 二 神話と呪術
  • 三 神聖王朝の構造
  • 四 秩序の原理
  • 五 社会と生活
  • 六 人の一生
  • 参考文献
  • あとがき


<メモ>

漢字の形の由来例:

  • 義…犠牲の羊を鋸で切り離す
  • 京…異族や敵屍をもって築く凱旋門
  • 霸…風雨にさらされて漂白された獣屍
  • 縣…首を逆さまに糸に懸けたようす
  • 眼…神の陟降する聖地に邪眼をおいて悪霊の侵すのを禁ずる意象
  • 樂…神楽舞いのとき持つ鈴の形
  • 蠲…牡器を縊って取り去り、犠牲を清めること
  • 葬…草間に屍体を埋める字

物騒やなあ( ˘ω˘ )

 

しかしこれらの象形文字は、比較的早い時期に、相ついで滅んでいった。ただ漢字だけが、いまもなお不死鳥のように生き残っていて、その巨大にして旺盛な生命力は、容易に枯渇をみせようとしない。もしこの文字の背後に、文字以前の、はかり知れぬ悠遠なことばの時代の記憶が残されているとすれば、漢字の体系は、この文化における人類の歩みを貫いて、その歴史を如実に示す地層の断面であるといえよう。またその意味で漢字は、人類にとっての貴重な文化的遺産であるということができる。

 

しかしその甲骨に、文字を刻し、聖化の手段をも加えていることは、文字が本来、どのような目的で創作されたかという、古代人の意識を語るのであると思われる。文字は ことばの呪能を吸収し、定着し、持続するためのものであった。まして、王の神聖化に奉仕するものとして作られたのであった。神話にささえられてた王朝の権威が、現実の王の神聖性の上にその比重を移したとき、文字が必要とされたのであった。

 

異族を犠牲とし、動物霊を駆使し、あらゆる呪物を用いて呪禁を行なうのは、その背後に、アニミズム的な世界観や、精霊の観念があることを示している。殷王の壮大な陵墓遺址から、これらの観念を示す種々の事実が知られ、原始の残映がなお豊かに存することが認められるが、それはまた当時の文字形象のうちに、明らかにその蹤跡を残しているのである。

 

周はすでに神の直系者たる神話をたず、帝を至上神とすることはできなかった。それで周人は、帝を非人格化した一つの理念としての天を、究極の名のとした。これによって、周は古い神話と断絶した。神話の世界は滅んだ。そして理性的な天がこれに代わった。それは中国の精神史の上で、最初の革命的な転換であった。