Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

【概要】
著者(監督):中室牧子

「教育投資への収益率は、株や債券などの金融資産への投資などと比べても高いことが、多くの研究で示されています」。投資効果が高い教育こそ社会科学のエビデンスに基づいた政策が必要。

「教育にエビデンスを。」の記述にもあるように、ランダム化比較試験を駆使して「なんとなく」意思決定するのをやめようやないか。

 

【詳細】
<目次>

  • 第1章 他人の“成功体験”はわが子にも活かせるのか?―データは個人の経験に勝る
  • 第2章 子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか?―科学的根拠に基づく子育て
  • 第3章 “勉強”は本当にそんなに大切なのか?―人生の成功に重要な非認知能力
  • 第4章 “少人数学級”には効果があるのか?―科学的根拠なき日本の教育政策
  • 第5章 “いい先生”とはどんな先生なのか?―日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
  • 補論 なぜ、教育に実験が必要なのか


<メモ>

教育にエビデンスを。

 

経済学がデータを用いて明らかにしている教育や子育てにかんする発見は、教育評論家や子育て専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある

 

教育経済学者の私が信頼を寄せるのは、たった一人の個人の体験記ではありません。個人の体験を大量に観察することによって見出される規則性なのです。

 

社会科学も科学を名乗るからには社会実験を行ってデータや知見を蓄えてはいるのだが、日本では気分で科学的な根拠(エビデンス)はあまり重視せずに教育政策を決めている模様。「財政難の日本だからこそ、エビデンスが必要」とのこと。

 

学力の分析の本質は、アウトプットである学力とインプット|家庭の資源や学校の資源─の関係を明らかにし、何に重点的に投資をすれば子どもの学力を上げられるかを示すことにあるのです。しかし、私の知る限り、そのことを正しく理解している自治体や教育委員会は少なく、単純に都道府県別順位に一喜一憂してしまっているように見受けられます。

 

データに基づくエビデンスによって、今後、自治体や教育委員会が「何をするべきか」という道筋がはっきりと示されますし、学校や保護者、納税者への説明責任も果たすことができます。これは、自治体や教育委員会などの政策担当者にとってみれば、大きなメリットだと言えるでしょう。

 

ランダム化比較試験は、教育政策の因果効果を定量的に明らかにするために、経済学者が駆使しうる最大の武器なのです。そしてそこから得られた知見が、現実の教育政策に活かされれば、誰よりも教育を受ける子どもたち、ご両親、そして納税者である国民にこそもっとも大きな恩恵があるに違いありません。

 

  • グラフと出典を示しているのは当たり前だが重要。
  • 「教育投資への収益率は、株や債券などの金融資産への投資などと比べても高いことが、多くの研究で示されています」
  • ゲーム等を過度に禁止しないこと。父母が家庭での教育に手間をかけること、習熟度別学級を設けることは有効(少人数学級は別に)
  • アウトプットよりインプットの達成を評価するとGOOD(結果よりプロセス、才能より努力)。
  • 就学前教育(幼児教育)が最も収益性が高い。
  • 非認知能力(GRITなど)を鍛えるのが学力や収入の向上に有効。
  • 「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが自制心を鍛えるのに有効。
  • 学力に与える影響は遺伝・家庭環境が同程度。
  • 疑似相関を因果関係と読み違える危険性、エビデンスにも階層があること(補論)、ランダム化比較試験の有効性と問題点(まあ無視小だが)などもきちんと説明してくれる辺りは高評価。

 

以下の面白エピソードもけっこう好き。

 

  • 試験時期に祖母の急死率が急速に高まる。
  • ときどき大学で「美人ですね」といわれることがありますが、それはたいてい成績の芳しくない学生と成績について話しているときに限られていますので、自分の実力については正確に把握しているつもりです。