【概要】
著者(監督):大木毅
ドイツ第三帝国の「名将」ロンメルの神話を検討する。呉座勇一を見習ってロンメル観を更新したかった模様。
WWⅠでの山岳戦、WWⅡ西部戦線の緒戦・北アフリカ戦線での戦績を振り返り、彼が師団長クラスでは優秀だが、軍団長・軍司令官としては不適格だったことを結論付ける。勘に任せた無謀な進撃と独断専行が売りのようで、第七機甲師団のフランス縦断は痛快ですらある。
愛すべきオッさんだったようだが、最期はチョビヒゲに消される。南無。
【詳細】
<メモ>
ロンメルが、平凡な将校たちの隊伍から抜け出すには、戦争を必要としたのである。
アウトサイダーゆえの抜擢と活躍、そして悲劇を味わったロンメル。彼は、猛将にして典型的プレイングマネジャーだった。
勇敢さであるとか、前線での状況掌握能力といったロンメルの長所が問題なく発揮できたのは、第七装甲師団長時代までだったのだ。戦術的には非の打ちどころがなくとも、より高いレベルの指揮をゆだねられるにつれ、戦略次元におけるロンメルの思考の乏しさは露呈していく。
でも
ロンメルには特筆すべき美点が一つある。
戦士として、闘争の対手を尊重するという性格だ。
献身や率先垂範で信頼を勝ち取るのは古今東西どこでも同じのようだ。
綿密さ。明瞭な指示。信頼して仕事を任せた部下に対するたゆまぬ配慮。自分自身に対する厳しさ。不足ばかりが目立つ条件下でも、同じように共同生活を行うこと。こうしたことによって、指揮官は、短期間のうちに、自分の部下の信頼を勝ち取ることができる。
ドイツ軍に残る領邦や出自の名残り、軍隊の編制の階層性、麾下・隷下の違い、浸透戦術や電撃戦、前方指揮といった軍事用語も教えてくれる。
ドイツ軍は、戦車や航空機を得て、あらたな作戦・戦術構想を編み出したのではなく、時代に先んじた軍事思想のもとに戦車や航空機を駆使したのだといえる。