【概要】
著者(監督):成田悠輔
最近よく見るオシャレメガネの彼。
「断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは何も変わらない」
とのっけから冷酷に宣言し、疲労した民主主義(政治制度)の処方箋を提示する。著者的には「無意識データ民主主義」が推し。本人も言っているように、内容は机上の空論というか思考実験というか「たたき台」にすぎないので、「切り抜くなりパクるなりリミックスするなり自由に」、「燃やすなら再起不能なところまで徹底的に」。何らかの形で「政治の現場に落とし込」むことを望んでいる。
【詳細】
<目次>
- 第1章 故障(○□主義と□○主義;もつれる二人三脚:民主主義というお荷物 ほか)
- 第2章 闘争(闘争・逃走・構想;シルバー民主主義の絶望と妄想の間で ほか)
- 第3章 逃走(隠喩としてのタックス・ヘイブン;デモクラシー・ヘイブンに向けて? ほか)
- 第4章 構想(選挙なしの民主主義に向けて;民主主義とはデータの変換である ほか)
<メモ>
要約あり。忙しい人は序盤のアブストだけ読まれい。
それに対する解決策…
- ①闘争:選挙制度の再デザイン(世代別選挙区の設定、平均余命での票の重みづけ、未成年の保護者に代理投票権を与えるなど)…★★
- ②逃走:政治的デモクラシー・ヘイブン(お金持ちが暮らしやすい国や地域に脱出する)…★
- ③構想:無意識データ民主主義(民意をデータ化して政策に反映させる)…★★★
著者的には③を推しているみたいだ。ただ人間に使いこなせるかどうか。意思決定がブラックボックス化するのは何だか気持ち悪いなあ(すでに現代社会は多くの事物がブラックボックス化しているが)。
実現性はともかく、「生活や価値が分岐するにつれ政策論点も微細化して多様化しているのに、いまだに投票の対象はなぜか政治家・政党でしかない」という点には同意。選挙とは、民意やアイデアを反映する関数のひとつに過ぎないことに気づかされた。
民主主義が「意識を失う」とか「痙攣」するとか「瀕死」とか、独自の言い回しをチラッと光らせる。他にも半熟(反実)仮想とか、有名な闘争・逃走反応を下敷きにした表現も。