Javaさんのお部屋・改

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

わしの眼は十年先が見える

著者:城山三郎
評価:B

【概要・感想】

『落日燃ゆ』『指揮官たちの特攻』の城山三郎が、倉敷紡績を西日本屈指の大会社に育て上げ大原財閥の礎を築き、倉敷絹織(現・クラレ)を創立した大原孫三郎の生涯を描く。彼は単なる「成功した事業家」ではなかった。「人格主義」を体現する福利厚生の向上や研究所・美術館の設立など、他人(ひと)にやれないことを追い求めた「不学の大学者」であった。


 孫三郎は早くも第二章で、莫大な借金をこさえ義兄を死なせてしまう。姉卯野、義兄の亡骸とともに列車で里帰りする場面の描写はなかなか胸に迫るものがあるが、この出来事は孫三郎のみならず読者にも衝撃を与えたことだろう。そして、倉敷に戻って改心した彼を倉敷の一資産家で終わらせないためには、石井十次との出会いがどうしても必要だった。この出会いが、孫三郎を教育や福祉などの社会事業に目覚めさせることになる。


孫三郎は走り出す。そして止まらない。



102頁のこの一文が効く。いや、かなり効く。いやいや、とんでもなく効く。実際、このあたりから彼の生涯は濃密なものになっていく。彼が行った事業の幅広さ、改革の力強さはここに書くまでもないだろう。


 最後に。ちょくちょく出てくる砂田の存在が話の味付けにピリッと効いている。孫三郎のつかみどころのない性格を映す鏡としての彼の存在は、著者が注力した点の一つだろう。


【名言】

十人の人間の中、五人が賛成するようなことは、たいてい手おくれだ。七、八人がいいと言ったら、もうやめた方がいい。二、三人ぐらいがいいという間に、仕事はやるべきものだ。一人もいいと言わないときにやると、危ない。