評価:B
【評】
「美しい経済人」大原總一郎の、倉敷絹織に入社してから天に召されるまでの一代記(学生時代の記述は控えめ)。
戦時の苦悩、岡山空襲、敗戦を経て、
国産化学繊維・ビニロン投資の資金集め、育てたビニプラの中国輸出に至る。
その理想は現実に試され、鍛えられ、遂に現実となった。
動員された学生を対象にした名曲鑑賞会や、虎の子ビニプラの中国輸出にかける執念などのエピソオドから、その人柄がしのばれる。
また、吉田茂や佐藤栄作などをはじめとする人脈の広さ太さも、彼の徳望をうかがわせる。
文大曰く、
聡一郎さんは言葉を残した経営者だと思うんです。(中略)
経営者の最も重要な役割は、社員や世間の行動の規範になるような言葉を残すことではないでしょうか。
私は、他人の知識によって技術水準を引き上げてもそれは評価しない。一見、頑固で独善的のように見えるけれど、真に恃むべきものは自らの内なる力だ。これが独創だよ。それを信じて問題を解決していく者だけが、明るい広場に出て、燦々と陽の光を浴びられるんだ
人間、何かをやり出すと必ず壁にぶつかってしまう。普通の人間はそこで止めてしまうか、いい加減になってしまう。しかし人間はそこからが大事なのだ。壁をぶち破っていくことが大事なんだ。
困難に遭遇した時、あるいは反対に好調すぎて安易な道を選択しそうになった時、そんな時は倉敷レイヨンの社訓に立ち返ってください。「世のため、人のため、他人のやらないことをやる」、この精神で絶えずイノベーションに挑戦してください。