Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

シュトヘル

あしたわたしが死んでも。消えないのか…?

わたしの仲間の名前は…この文字が、

憶えていてくれるのか。

……ユルール。

――それが…

…それが、文字なのか。

西夏(文字)という渋すぎる題材を駆使し、奔騰する歴史のうねりのなかに生きた人々と文字を描き切った。硬派なストーリーと緊張感あるバトル、ユルすぎるあとがきが魅力か。

【詳細】
<あらすじ>
西夏を滅ぼし金を併呑せんとするモンゴル。
奔騰する時代のうねりを背景に、熾烈な玉音同争奪戦を描く。西夏の文字を、そこに生きた人々の記憶を守り抜こうと抗う者たちがいた。
 
硬派なストーリーと緊張感あるバトル、ユルすぎるあとがきが魅力か。
転生を活用した人格切替(シュトヘル⇔スドー、後半は共存)と残機回復がややSF的だが、基本的には歴史マンガ系に分類できる。
ユルールとシュトヘルが互いを思う気持ち。草原の夜に夢や思いを語り合う二人。文字のありがたみとすばらしさ。想いは今へつながっている。
 
<印象>
  • スドーにとってはこっちが現実? スドーのやさしさと笑顔が読者にとっても清涼剤だったりする。
  • ぞくぞく登場する人物、敵味方を行き来するユルールやハラバルに悩まされる。
  • グルグル目や水彩画風のカラーページ、セリフ中のひらがな(「きみ」「おれ」)が印象的。
  • 倒した敵の武器継承、虎と狼の共闘はアツい。

 

<名言集>

1-67<ユルール>

みんな焼けてしまった。

たぶん…百年 二百年伝わったものも。

 

1-196<ユルール>

草原には文字はない。

強いときは生きて弱いときは死ぬ。

草原では心は留まらない。

想いも約束もすべて忘れられくりかえされていく。

―――文字は、人を憶えておくために生まれた。

遠くにあっても、時を越えても、

人と人とが交わした心を伝え続ける……

だから、心底美しい。

おれはあこがれる――

 

2-44<シュトヘル

弱まる鼓動が聴こえる…

流す血が尽き、

モンゴルの心臓が止まるまで。

噛み殺し続けてやる。

わたしは、きさまらに憑いた悪霊だ。

 

2-83<ユルール>

殺されるのは怖いよ。

…本当に怖い。

だけど文字が殺されていくのは、

もっと怖い。

 

2-176<シュトヘル

あしたわたしが死んでも。消えないのか…?

わたしの仲間の名前は…この文字が、

憶えていてくれるのか。

……ユルール。

――それが…

…それが、文字なのか。

 

4-60<吉祥山>

――血や一族のみを守るならば人間は、

永遠に縄張りを奪い合うだけの獣ではないか。

 

8-10<シュトヘル

ユルール。

生きているというのはふしぎなことだなあ…

ふれて、かいで…

…声をきいて、目を見て――

おまえといる。

もうほかに望むことは何もない。

 

8-179<ユルール>

…あの人の指が、

あの人の指がそれをなぞったとき、

そのときからこれはおれの文字だ。

この文字でしかあらわせないものがあって、

この文字でしかあらわせない心がある。

 

9-182<シュトヘル

だめだ。誰かに出会え。

…出会いが生きなおさせる。

 

10-33<ナラン>

父上大ハンは空間と距離を呑み干さんとし――

ユルールは時間を越えたがる。

 

10-128<ユルール>

出来事と心だ。

ナラン、いつか…

誰もが自分の出来事と心を記したなら。

それを集められるだけ集めれば…

そのかたまりは誰のものでもなく、何色にもならない。

その出来事と心のかたまりで、

時代というものさえ読めるようになるかもしれない。

文字で記すのは、

――出来事と心なんだ…

 

12-186<ユルール>

母の国 西夏の文字が消えてほしくない――

ただの小さな望みに、

シュトヘルは心をふるわせてくれた。

スドーきみは信じる拠り所になってくれた。

シュトヘルときみ ふたりにと会えたことがおれの身をめぐる力だ。

今も――きっと死ぬまで。

スドー。

手をかたく握るきみのあいさつがなつかしい。

 

13-172<ハラバル>

おまえと駆けたのは愉快だった。

 

13-189<ユルール>

おれはただ きみが好きだ。

欲しいものはあしたにしかない。

未来あしたにしか。

それでも、シュトヘル

今ここにいるきみが。

きみといる今が。

きみが…。きみが好きだ。

 

14ー194<ユルール>

また会えたね、スド――

きみがおれを生かしたわけが今はわかる。

はじめは恨んだけれど。

記された文字はそれだけでは語らない。

人が、ふれて―――そこに、

出来事と心が生き返る。何度でも。

だから、人を

いつも静かに文字は待っている。