Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗

ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書) [新書]
著者:円谷英明
評価:B

幼き日々、ウルトラマンに育てられた自分が、このタイトルに惹かれないはずがなかった。
円谷英二の孫が綴る、円谷プロの暗黒面。反面教師とはこのことだ。
読んでいるとウルトラマンの裏事情が見えてしまって悲しくなる。

“ 我々円谷一族の末裔は、祖父が作った円谷プロの経営を全うすることができませんでした。現存する円谷プロとは、役員はおろか、資本(株式)も含め、いっさいの関わりを断たれています。
 これから、約半世紀にわたる円谷プロの歩み、真実の歴史を明かそうと思います。その中には、今もウルトラマンを愛してくださる皆さんにとって、あまり知られたくないエピソードも含まれているかもしれません。
 成功と失敗、栄光と迷走を繰り返した末に、会社が他人の手に渡ってしまった背景には、一族の感情の行き違いや、経営の錯誤がありました。私も含め、どうしようもない未熟さや不器用さがあったことは否めません。

 円谷一族の人間は皆、いい意味でも悪い意味でも、子供だったのかもしれません”



奔走の末、すべてを失った著者。

“二〇〇八年の夏、自宅を売却しました”

          ↓

” 私は今、映像の世界からは完全に足を洗い、ブライダル会社の衣装を運ぶ仕事で忙しく働いています。日々、淡々と過ごす中で、唯一の楽しみは、かつて円谷プロの若いスタッフたちと共に、よく父に連れて行ってもらった海釣りです。
 未明の薄暗い海で、ひとり静かに釣り糸をたれていると、私が子供だったころの円谷プロスタジオの、華やかなりし日々の喧騒が聞こえてくるのですが、あるいは、打ち寄せる波の音が、そう聞こえるだけなのかもしれません”

の流れには、著者の整った文体も相俟って、落涙を禁じ得ない。