
名前がいっぱい (新潮文庫) [文庫]
著者:清水義範
評価:B
初清水義範。パスティーシュ(作風の模倣)小説の名手らしい。
「名前」にまつわる話が10編。読んでいると案外笑いが漏れるで息抜きにいいかも。
95年頃の作品ではあるが、HNやDQNネームのことに関しても書かれてあるのは興味深い。豊富にネタが供給された今、もう一度この作品を書いたらもっと面白いものになるかも。それにしても、「パソコン通信」という表現の90年代臭がすごい。
1930~1970年まで、男の名前は「ひろし」が一位を守り続けていたとか、織田信長の戒名が「惣見院殿贈大相国一本泰願尊儀」なんていう厨二度MAXなものだったとか、蘊蓄・小ネタがたくさん仕込まれている。ちなみに夏間雅子の戒名は「芳蓮院妙優日雅大姉」だ。
作者の他の作品、『主な登場人物』『永遠のジャック&べティ』なども読んでみたい。
“親からもらった自分の本名は、神聖なものであって穢してはならない、という意識が少なくとも我々日本人にはある。”
“見事なもんだよ。実に論理的だ。ものや現象は、固有の名を持つことによって存在を認識できるようになる。”