【概要】
著者(監督):劉慈欣 訳:大森望、泊功、齊藤正高
『三体』の要素を短編化した感じ。実際の制作順序は逆だが。「郷村教師」「詩雲」「円」あたりが良いか。星新一感に絶妙な用語のリアリティを足した感じ。『三体』を読んだ後だとややインパクトに欠けるかも(まだ1冊目しか読んでないが)。
摩擦力ゼロの平面、完全な幾何学的物体、周の文王が発明したコンピュータなどのぶっ飛び設定がたまにある。話の本筋は、SFでおなじみ先端技術の暗黒面、超文明との接触、パラレルワールド、バタフライエフェクト、ネオ李白、量子ストレージ、多重次元、ブラックホール爆弾、世界線、記憶遺伝など王道だが多岐にわたる。
【詳細】
<目次>
- 鯨歌(原題「鲸歌」)
- 地火(じか)(原題「地火」)
- 郷村教師(原題「乡村教师」)
- 繊維(原題「纤维」)
- メッセンジャー(原題「信使」)
- カオスの蝶(原題「混沌蝴蝶」)
- 詩雲(原題「诗云」)
- 栄光と夢(原題「光荣与梦想」)
- 円円(ユエンユエン)のシャボン玉(原題「圆圆的肥皂泡」)
- 二〇一八年四月一日(原題「时尚先生」)
- 月の光(原題「月夜」)
- 人生(原題「人生」)
- 円(原題「圆」)
<メモ>
・地火
新しい技術には、たとえ成功したように見えても、つねに潜在的危険がある。
⇒新技術の利点とリスク。技術士!
・郷村教師
中国の片田舎と超文明のまさかの邂逅。やっててよかったニュートン力学。
「第十四問、正解!! 第十五問、ある物体について、その質量、受ける力、加速度の関係を説明せよ」
子どもたちは声をそろえて言った。
「ある物体の加速度は、それが受ける力に比例し、その物体の質量に反比例する!」
「第十五問、正解。文明テスト合格! 恒星500921473第三惑星に3C級文明の存在を確認」
「特異点爆弾、方向転換! 目標を外せ!」
・詩雲
かくも数少ない符号を用いて、かくも小さく精巧な行列のなかに、かくも豊かな感情の厚みと解釈の可能性を含むものは珍しい。しかも、その表現の方法たるや、異常なほど厳格な詩的韻律の法則に従っておる。
⇒漢詩。究極詠詩プロジェクト、始動!
・月の光
シュタゲ、まどマギなどで一般化したループもの(記憶持ち越し型)。
「そうだ。人生は、全人類の歴史と似ていなくもない。最初に提示された選択肢がやはりベストだったのかもしれない。しかし、それを知るには、他の時間線を旅してみるしかない」
・人生
進化がどうして人間の記憶遺伝をシャットダウンしてしまったのか、その理由がいまわかりました。精神がどんどん繊細になってきた人類にとって、無知というのは、はじめてこの世界に出てくるときに彼らを守ってくれる小さな家なのです。わたしたちはいま、あなたの子どもからその小さな家を奪って、彼を精神の荒野に投げ出してしまったのです。
・円
「まことに興味深い。一人一人のふるまいは単純そのものだが、集まると複雑な知性が現れてくる」
⇒三体で見た感。