【概要】
著者(監督):今井むつみ
日本語と英語のスキーマのズレ、記憶と学習のしくみなどの話題を通じ、認知科学的に有効な外国語学習法を提案する。予想が裏切られたときに人は最も学ぶらしい。
【詳細】
<目次>
- 第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
- 第2章 「知っている」と「使える」は別
- 第3章 氷山の水面下の知識
- 第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
- 第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法 基本篇
- 第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法 上級篇
- 第7章 多聴では伸びないリスニングの力
- 第8章 語彙を育てる熟読・熟見法
- 第9章 スピーキングとライティングの力をつける
- 第10章 大人になってからでも遅すぎない
<メモ>
「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。
ブロッコリーが可算か不可算かは、話し手が、その文脈で、今は「数えることに意味がないかたまり」と見たいか、「一つ一つを別個の個体」として見たいかによって決まる。
つまりことばについてのスキーマは、氷山の水面下にある、非常に複雑で豊かな知識のシステムである。スキーマは、ほとんど言語化できず、無意識にアクセスされる。
誰もが母語に関しては豊かなスキーマをもっているのたが、そのことを知らずに、聴いたり読んだりしたことを理解したり、話したり書いたりするときに無意識に使っている。暗黙の知識を無意識に適用しているので、外国語の理解やアウトプットにも母語スキーマを知らず知らずに当てはめてしまうのである。第1章で述べたように、人は注意を向けない情報を取り込むことはせず、記憶することもできない。そしてスキーマは注意を向ける情報を選択する。
日本語スキーマの影響で「似ている」と思っていっしょにしてしまっている単語の意味の違いを理解し、使い分けをするために大事なのは、比較し、意識的に違うところを見つけ出すことだ。しかし、自分の中で「同じ」と思っていると、人が解説してくれても、ふむふむとそのときには思うのだが、もともともっている誤ったスキーマのせいで、大方忘れてしまうのだ。
リスニングに時間を使うより、まず語彙を強化することと、その分野の記事や論文を読んで、その分野のスキーマを身につけることに時間を使ったほうがよい。語彙が豊富にあり、スキーマが働くトピックなら、そして――ここが大事なのだが――自分が絶対に理解したいと思う内容であれば一少し耳が慣れれば英語はおのずと聴こえるようになる。
日本語字幕を見ながら認識できないセリフには、予測できなかった単語や言い回しが含まれていることがほとんどである。この経験が語彙の増強につながる。予測が裏切られたとき、もっとも深い情報処理が起こり、記憶に深く刻印されるのである。
だから、あせらず、気長に、完璧を求めず、しかし惰性ではなく、楽しみながら、よりよい学習法を考えながら続けること。それこそが英語学習の成功の秘訣である。
英語を自由に使えるようになるということは、英語独自の世界の切り分けかた、世界のとらえかたを身体に落とし込むことである。
<おもしろリンク>
●SkeLL
●Corpus of Contemporary American English (COCA)
☞いずれはentityに行きつくよ!
私は自分の好きな動物(ネコとか)や植物(バラとか)のhyponym, hypernym をヒマなときに検索し、一人で遊んでいる。WordNet で名詞を調べると、西洋の文化で概念がこういうふうに階層的に整理されているのだな、ということが見えてきて楽しいし、バラやネコの種類の名前もたくさん覚えられてうれしい。
なんだその遊び(; ・`д・´)