【概要】
著者(監督):安藤隆幸
零戦の技術開発史を通じ、航空機や流体力学・機械力学の基礎知識、フラッタによる曲げ・ねじり振動と回転由来の質量・空力アンバランス振動など、機械振動のあれこれを学ぶことができる名著ぢゃったぞい(๑╹ω╹๑ )✈︎
著者が抱く当時のエンジニアへの共感と尊敬がページの端々から感じられる。
FEM解析による翼の曲げ・ねじり解析や、慣性モーメントの簡易計算の様子を見ていると、複雑な構造を簡易的にモデル化してまずは定性的に解析することが重要と教えられる。
【詳細】
<目次というか取り扱う技術項目>
- 未開拓な技術領域で遭遇した零戦の技術課題 – フラッタ
- 共振周波数と固有モード
- 主翼の振動特性
- 風洞試験模型
- 弾性主軸
- 断面2次モーメント
- 飛行機の強度と耐空類別(耐空性審査要領)
- 機体の操舵系統(サイドスリップと被弾回避操作)
- 飛行機の速度(計器指示速度, 較正対気速度, 等価対気速度, 真対気速度)
- 飛行機の燃費(航続性能と燃料消費率)
- 飛行機の失速速度・離陸速度・設計運動速度・設計巡航速度・設計急降下速度・超過禁止速度
- 回転機械の次数成分
- プロペラの振動次数
- 慣性モーメント(イナーシャ)
- パラメトリックエクサイテーション(係数励振)
- レシプロエンジンの燃焼起振力と慣性起振力
- 慣性力・慣性偶力の次数計算(直列4気筒, 6気筒, 水平対向4気筒, 星型複列14気筒)
- 2次振動と2次バランサ
- 星型複列14気筒エンジンの振動
- 零戦がもたらした振動技術革新
<メモ>
零戦の開発はすべての性能を一度に世界水準まで高めるというきわめて大きな技術的挑戦のはじまりでもありました。
零戦では時速500キロメートル以上という未開拓な速度領域に足を踏み入れたことによって、誰も経験したことのない振動現象に遭遇したのでした。
(風洞試験終了後直ちに開かれた事故調査委員会で)
「この実験結果をかくさず発表し、筆者のそれまでの不明を深くわびた。技術というものが、たとえ研究の分野であっても、いかに真剣なものであるか、また、安全のためにはいかに細心、周到な注意が必要であるか、を肝に銘じて教えられた。そして、この事故に対し深く責任を感じてどんな懲罰をも覚悟していたにもかかわらず、何のおとがめもなかったのみか、多くの上司、先輩からかえって激励されたことは、まことに感慨のきわみであった。」
すばらしい(; ・`д・´)